Aug 21, 2005

育児とインターネット

 先日、テレビの育児番組の中で、インターネットの活用を勧める場面に遭遇した。
 インターネットを通じて育児情報を手に入れたり、地域の母親のコミュニティを作ってみてはどうか……というような内容で、昨今流行のブログを使って、自分が抱いている育児の悩みを発信してみてはとも提案するものだった。
 私はすでにその番組がターゲットとしているような乳幼児の母親ではなくなっているし、さほど真剣に見ていたわけではない。たまたまやっていた番組を偶然見たというだけなのだが、その提案に「?」と疑問を抱かずにいられなかった。

 その番組がこれまでにどの程度インターネットの利便性について語っていたのかは不明だが、私が見た部分では明らかに「インターネットに対する深い知識はなく、少なくともこれまでにはインターネットにさほど興味を持っていなかった女性」をターゲットにした語り口調だった。これは単純に「インターネットを育児のツールのひとつとして利用しよう」という以上のプレッシャーを与える提案ではないだろうか。

 例えばそれが、すでにインターネットを日常的に活用している女性に対しての提案だというのなら、別に疑問はない。実際にインターネット上には役立つ情報は数多く存在しているのだし、子育てに関する情報を得ることや、同じように育児に不安を抱く母親同士のコミュニティに参加することでそれなりに解決する悩みもあるのかもしれない。
 だが、これまでインターネットなど使ったことがない母親がその話を聞いた時「私も世間に遅れをとらず、インターネットを使って情報を得たり、母親同士のコミュニティに参加しなければならない」と焦りを感じてしまう危険性はないのだろうか? 育児ですでに手一杯になって外出さえままならない母親が、新たにインターネットの(下手をすればパソコンの操作方法も含めて)知識を身に付け、そこでのコミュニティに「義務感から」参加するとしたら、その負担と苦痛は耐えがたいものだ。せっかく立ち上げたブログに「インターネットのお母さんコミュニティでのお付き合いに悩んでます」なんていう書き込みをする羽目に陥るのではないだろうか。
 冷静に考えればそんな焦りや義務感は馬鹿馬鹿しいことかもしれない。だが現実に、トイレトレーニング、公園デビューなど、これまでにも育児番組や育児雑誌が紋切型のブームを作り、解決を目指していたはずなのに逆に母親たちの悩みを増加させてしまった例は決して少なくない。

 育児中の母親のインターネットやiモードの利用を、否定しようというつもりは私にはない。番組中でも「外出しなくても世間とかかわることができ、電話と違って子供の睡眠を邪魔せず、時間も選ばない」と利点を話していたけれど、その点についてはまったくその通りだと思う。私もかつて(まだパソコン通信の時代だったが)、仕事や趣味のためにネットを大いに利用していたし、身近にいる乳幼児を持つ母親がインターネットを活用して趣味を楽しみ、交友関係を広げる姿も見てきた。育児中の母親に限らず、外出のままならないさまざまな事情を持つ人にとって、インターネットが便利な道具であることは間違いない。
 だが「育児の情報を手に入れる」なんていう優等生的意見は、ついでの機能として頭のどこかに入れておけば充分だ。インターネットで楽しんでいることを亭主やお姑さんがとがめたときの言い訳にでも使えばいい。そのためだけに導入し、利用するというのであれば、パソコンやインターネットは決して手軽な手段でも安価な手段でもなく、育児に悩む母親それぞれの事情をすべて考慮した上で的確な答えを出してくれる奇跡の道具でもない。
 インターネットを使ってみましょうと勧めるのならば、何も短い息抜きであろうその時間まで母親を育児に縛りつける提案はしないで欲しい。切実にそう感じる。子供が昼寝をしている間だけは育児から解放されて、インターネットで好きな映画、ドラマ、コミック、歌手、俳優……何でもいいから自分の好きなものを眺めて過ごし、また子供にゆとりをもって接するための活力を得る--そんな提案はできないものだろうか。

 番組の中では「核家族化によって育児に関する相談相手を失った母親の孤独」といった話題にも触れていた。そんな時代に育児に直面した母親にとって、育児番組や育児雑誌は大きな支えだ。だからこそ、優等生的意見で母親を義務感や焦りに追い立てる存在ではなく、母親の悩みや不安に本当の意味で共感してくれる味方であって欲しいと思う。

(Written by きなこ☆きなこ)

新しい執筆者

今日から、このブログに書き手が一人加わります。
もう10年以上の付き合いになる友人です。
概ね、私と同様の考え方をもっているのですが、自ら主張されたいことがあるということで、この度、ここに加わっていただきました。
では、本人からいただいた、プロフィールをいかに掲載します

名前:きなこ☆きなこ
性別;♀
1960年代の生まれ。
バツイチ・ふたりの男の子の母。現在はフリーライターとして世間を渡る。

ご挨拶:
KYOKURON_STADIUMは立ち上げ当初からよく見に来ていました。
このたびは雪富さんのご厚意で不定期ながら投稿させていただけることになり、「女性ならではの意見をずばっと書いて欲しい」というご要望を頂きました。政治・戦争といった雪富さんの得意分野とは少し違った側面からその時々で話題をつかまえて「極論」を書いて行ければ、と感じています。




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