Apr 27, 2005
疑問だらけのマスコミ報道
JR福知山線事故について、様々な“新事実”が報道されてきている。
その中で、マスコミの“誤り”が明らかになってきた。
まず、進入速度については100km/h程度ということになってきたようだ。
今まで、散々に120km/h、133km/hという数字を喧伝して、列車がそこまで速度をあげたかのような印象操作に近い報道はなんだったのだろうか。
また、単純な速度超過で脱線したかのような報道の論拠も弱くなった。
実際、事故調査委員会でも、単独で突出した異常はなく、速度を含む複合的要因で、原因究明には時間がかかるという見解を示している。
ブレーキ痕について、昨日の段階では、カーブの手前にあったという報道がなされていた。しかし、事故調査委員会は現場付近にブレーキ痕はなかったとしている。これは大きな違いだ。
電車に遅れについても、1分30秒あったものが、直前の駅では1分に短縮されていたという報道になっていた。しかし、この直前の駅での「1分」は秒単位では計測できないシステムによるものだということで、実際には「1分~1分59秒」までの可能性があるという。つまり、短縮できていたかどうかはわからない(遅れが広がっていた可能性すらある)というのだ。
もちろん、これらの“新事実”も報道によるものだから、間違っている可能性がある。
が、旧事実とは異なる以上、どちらかが間違っているか、両方が間違っているかしかない。つまるところ、マスコミに誤りがあることにはかわりない。
だが、彼らは、それについて謝罪するつもいりは全くないようだ。
もう一つ疑問なのは、JR西日本に対する、安全性軽視という報道へのスタンスだ。
まず、正確なダイヤ運行を求めたことについては、「サービスに厳格である」ということでもある。それ自体は責められることではない。企業としては評価されるべきだ。問題は、それが「無理」なことかどうかということである。
また、ATSが旧型だという批判があるが、今回、いわれている“新型”とは、ATS-Pタイプのものだ。これは、ドル箱であり超過密運転区間である首都圏路線をもつJR東日本でATCとあわせて比較的広範囲に採用されているのを除くと、普及率があまり高くない。
JR西日本は、確かに大阪圏路線がドル箱ではあるが、関西圏路線は関東より私鉄が強く、競争が激しい。そのため、値上が事実上不可能である。
一方で、多くの赤字路線を大阪圏路線の黒字で支えるという不健全な構造にもなっている。だが、公共交通機関として安易に赤字路線を処分できない。また、バリアフリー化や電力消費量削減といった法令に基づくような課題も抱えている。
更にいえば、鉄道は整備を行うのに用地買収などを考えなくてはいけないため、常に現金をある程度必要とされるということもある。
こうした背景をふまえた上で、旧式とはいえ、ATSが装備されている以上、全く安全対策がなされていないわけではない路線に新型ATSを工事していないことが、安全性軽視といわれるほど判断を誤っているものなのかどうか。
新型なら防げたはずだから、工事してないのは安全軽視というのでは、あまりに結果論にすぎる。私自身は、判断がつきかねるのだが、こうした背景をも含めた上で「無理なサービスだったか」「安全設備の更新に手落ちがあったか」という観点で報道とは行われるべきではないだろうか(これは、JR西が安全軽視をしていなかった、と主張しているわけではない。それを論じるマスコミの視点があまりに疑問だということだ)。
以前の踏切事故でのエントリでも触れたが、会社の責任は大きいが、それだけでなく社会全体の問題もある(だから会社の責任が軽減されるとか、そういう意味ではない)。
今回の事故でもオーバーランをしたことで、車掌に乗客から抗議があったという。
1分遅れれば、ホームから人がはみ出てしまうほと過密した路線も大都市圏にはある。
1分1秒の正確さを求めているのは、換言してしまえば、会社ではなく利用者だ。
そして、超過密ダイヤが求められているのは、日本の大都市圏における交通システム全体の問題だ。
こうした点をきちんと論じていかねば、事故を本当に防ぐことはできないであろう。
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