Jan 20, 2005
NHKへの圧力問題(続)
NHKへの政治介入問題が、なおも進展している。 この件についてのまとめはgori氏のIrregular Expressionに詳しい(まとめ、ご苦労様です)。
要は「NHK-安倍・中川」と「NHK長井氏(告発者)-朝日新聞」の、どちらかが嘘をいっているということになる。 録音テープでもでてこない以上、両者の主張は水掛け論になるだけだ。 そこで、傍証(状況証拠)から、どちらの主張がより妥当性があるか検討してみたいと思う。
- ・なぜNHKは安倍氏に会ったのか
- NHKは予算を国会に握られている(承認が必要)。そうした場合、有力政治家のもとに「根回し」「陳情」にいくことは、NHKだけに限らず、広く行われている。そのシステムの是非は別にして日本政治の常識といっていいくらい一般的なことで特別視するにはあたらない。
- ・NHK上層部と安倍・中川氏の間で口裏合わせが行われているのではいか
- 海老沢会長問題など不祥事を抱え、国会の予算承認に暗雲がたちこめている現状では、与党有力政治家に逆らえないという構図はある。ただし、証拠もないので、周囲の状況から判断するしかない。
- ・NHKと安倍氏との会談の時、番組内容はわかっていたらしいのはなぜか
- 取材対象となった“法廷”は、12月8~12日のことである。これをNHKが取材していたのは早い段階からわかっていたようである。
また、ETVのシリーズとしての宣伝も行われたであろうし、一週間前には、当然、「次回予告」もあるはずだ。また、各種市販TV番組表なども二週間前以上先のTV番組表があるのだから、それだけでも、番組の概要の検討はつくだろう。
実際、朝日新聞によると遅くとも1月半ばからは“右翼団体”による抗議がNHKに行われている。政治家ならずとも、事前に番組内容を知りえたという証左であろう。 - ・どうして安倍氏との会談で放送前の番組のことをNHKは切り出したのか
- 1月半ばから右翼団体が抗議しているなどということは、当然、安倍氏らの耳には入っていただろう。そこで、NHKは予算をスムーズに通すためにも「釈明」する必要があると感じたことはなんら不思議ではない。
「右翼が抗議したりして、ご心配をおかけいたしましたが、番組になんら問題はありません」というような感じだろうか。
こう言われれば、安倍氏が「公正にやってほしい」と答えても不思議ではないし、一般論としての会話だ。これだったら、圧力と解釈するのは強引であろう。 - ・中川氏の証言内容が変わっている
- 変わったことは事実だ。ただし、中川氏は当時外遊中で、一部報道によれば飲酒中だったという話もある。本人は強引な取材で、つい曖昧な発言をしてしまった、と釈明している。それを信じることもできるが、あとで口裏をあわせたと見ることももちろん可能だ。
- ・強引な取材はあったのか
- これも証拠はないのだが、「あった」とするほうが自然だ。もし、こういった取材をされたとNHK・安倍・中川氏側が「嘘」をついたとしよう。だが、朝日新聞側が録音していたら、一発でおじゃんだ。そして、録音している可能性は十分に考えられることで、嘘をつくリスクが高すぎる。
- ・試写は異例か
- 全体から見れば異例だったのかもしれない。しかし、番組自体に“右翼団体”からの抗議が行われているという“異例”の状態の中、“試写を行って番組内容をチェックするのは、NHKとしては当然だろう。むしろ、ノーチェックで放送してしまうほうが非常識だ。
- ・なぜ、番組は短くなったのか
- 長井氏らのスタッフとNHK幹部側で、かなり揉めたような形跡がある。その結果、編集作業がギリギリにまでずれこみ、番組の尺調整ができなくなったということではあろう。しかし、その直接原因は「現場と上層部の編集方針の対立」であって、それが政治的圧力によるものだという証拠にはならない。
- ・編集指示は妥当だったのか
- まず、この番組は「NHKの」番組であり、「長井氏の」番組ではない。である以上、組織として権限をもつ上位の職制からの編集指示があること自体は妥当だ。長井氏自身のポリシーはあったのだろうが、それがNHKの組織としてのポリシーと異なるのであれば、編集指示が妥当だったということである。
組織の庇護・支援をうけられるが、かわりに組織としての制約をうける。それが組織に所属するということだろう。 - ・NHK幹部の編集方針は妥当だったのか
- 編集前の番組を見たわけではないが、各種情報ソースにあたる限り“法廷”はかなりの左翼偏向であるから、その“判決”を無批判に流せば、放送法第3条の2にある「政治的に公平であること。」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」に抵触する可能性が高い。特に前者については主観の問題もあろうが、後者については異論はあるまい。従軍慰安婦問題、天皇の戦争責任問題では、メジャー全国新聞でも意見が対立しているのだから。
従って、NHK幹部の編集方針は妥当であると考えられ、それは政治的に圧力によらないNHK独自の判断であっても全く不思議はない。
更に告発した長井氏のいう「政治的圧力」は伝聞と憶測によるものであり、直接、その場(政治的圧力をかけられた現場)にいたわけではないこと、朝日新聞と法廷を主催した団体幹部との近しい関係というのもある。
どちらの側にも有利なこと、不利なことはある。
だが、総合して考えると、安倍・中川氏のほうに説得力を感じる。
従って、先のエントリで、私が推理したことより、もっと積極的にNHK自身が編集指示を下していると推測を変更する。つまり、
・“右翼団体”からの抗議があって、番組が話題になる。
・自民党を中心とする政治家(安倍・中川両氏はを含む)該当番組(あるいは“法廷”そのもの)に対して好ましくは思っていなかった。→両氏の意向が何らかの形でNHKの幹部に伝わった。
・“右翼団体”の抗議、政治家の動向ををうけたことから、NHK幹部は、事実を確認するために番組をチェック。
・このままではあまりに偏向していると判断したNHK幹部は番組内容変更を指示(抗議や意向は番組内容をチェックするトリガーではあったが、直接的影響力は低いという意味)
・プロデューサーは変更に頑強に抵抗。幹部は安倍・中川両氏の名前を出して説得。
というところだろうか。
私的結論。
・長井氏は本気で圧力があったと信じている可能性もある(天然というか電波?)。
・朝日新聞の報道は誇張・誤報(あるいは捏造)の可能性が高い。
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