Nov 09, 2005

人権擁護法案の今後

人権擁護法案が話題になってから随分とたつ。
前回の選挙により人権擁護法案反対派が多く自民党から離れたり、議席を失ったりしたが、その新たな状況に対応した運動をしていくしかない。
実際、人権擁護法案「中身に問題」 法相、現法案提出に否定的(朝日新聞11月3日 = asahi.com)という報道があるように、推進者であった古賀誠氏の影響力低下により新たな展開も生まれてきている。

先の報道にしたところで、人権擁護法案そのものをあきらめるというものではない。
どのような内容になるかは不明だが、私が注目したいのは、以下のポイントである。

■言論の自由の確保
言論の自由は、民主主義の根幹をなすものであり、それに制限を加えるような法は、他の法より以上に慎重になるべきである。
例えば、公正取引委員会が恣意的な運用を行ったとしても、それを言論で指摘し、あるいはひっくり返すこともできよう。企業体であれば、その間の“不利”を耐える体力をもつことも可能だ。しかし、言論そのものが脅かされ、まして、個人が対象となるのであれば、そのようにはいかない。
これが大前提だ。

■“差別”の非包括的定義
本来、法の穴をふさぐためには、包括的定義を行うことが望ましい。
かつて、いわゆる「ねずみ講」禁止の条文で、その対象として「国債」が含まれていなかったために、それを使ってねずみ講を行った事件が発生したことがあった(しかも法案修正後には会社を解散したため、かれらがねずみ講として摘発されることはなかった)。これも、包括的定義を行っていれば、防げた事件であろう。
しかし、言論というものがデジタル的でなく曖昧な部分を多く抱えていることも鑑みれば、なにが法の対象となるかがわかりにくいのは、言論の萎縮につながり、健全ではない。
また、過去、人権擁護や差別解消という名のもとに、その“専門団体”によって行われてきた“弾圧”を知っている人間にとっては恐ろしいことこの上ないのである。

■救済(対抗)措置
人権擁護法案の趣旨からして、人権侵害の告発・認定というプロセスがあることは避けえない。その「素早い処理」に対して「素早い救済」が可能であるかどうかは注目しなくてはならない。
本来、推定無罪であるはずが、世間一般では推定有罪であるかのように扱われていることはもちろん、総会屋などがはびこってきたのは「ことなかれ主義」によるものだ。これが、「人権侵害の疑いにより告発」という出来事にどう対応するか、非常に危惧される。
個人という“体力”のないものを対象にしている以上、一般の裁判によらなくては救済できないようでは片手落ちだろう。

■実質業務の妥当性
人権侵害の告発件数をどのくらいと見積もって、それをどのくらいの人数でさばくのか。
場合によっては、単なる事務方が実質的な判断を行うことにもなりかねない。
そうなっては“危険性”は増すことになろう。

■濫用に対する歯止め
これは2つの意味がある。
一つは、“告発”の濫用である。
とにかく、数うちゃあたるで、特定の対象に告発しまくり、一つでもとおれば御の字というような“悪用”をしてくる輩が出てくる可能性は否定できまい。そうした事態を防ぐための歯止め措置が必要である。
もう一つは、この人権擁護組織の恣意的運用に対する歯止めである。
例えば「二次被害」を防ぐために、実際になにがおきたかは知らされずに「告発・認定」だけが発表され、あるいは、人権擁護組織に対する批判的言動事態が「人権侵害」として告発されてしまったらどうなるだろうか。
学生運動はなやかりし頃、「赤軍罪」という言葉があった。
もちろん、そんな罪状はないのだが、様々な法を駆使して、ほとんど言いがかりにも近い事由で警察が過激派を拘束したことを指す(最近では、オウム信者に対して同様なことが行われた)。
つまり、法の“濫用”は今の法でも十分にありえるということだ。
では、なぜ、人権擁護法案には厳格な“歯止め”を要求するかといえば、それが言動を取り締まるものだからである。
先ほど例にあげたような“濫用”が極一部に対して(国民一般がそれを知っても納得できるような範囲で)のみ行われているのは、言論の自由が存在し、それによって批判にさらされる可能性が常に存在するからだ(念のため、一部へ対象であっても、こうした“濫用”が許されるべきだと私が思っているわけではない)。
しかし、言論の自由を脅かすものがあった場合、そうはいかなくなる。
“濫用”に対して指摘ができなくなれば、それをとめる手立てはなくなるからだ。
だから、他の法以上に厳格な運用しかできないような歯止めがなくてはいけないと私は考えるのである。

おそらく近く修正案がでるのだと思うが、今後も注意深く動向をチェックしていきたい。

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