Feb 18, 2006
大丈夫か、永田議員?
衆議院予算委員会で、民主党・永田議員が、堀江前ライブドア社長が自民党・武部幹事長次男に三千万円の振込を指示したメールというものを“暴露”。政局を震撼させた──といいたいところだが、私はTVでのニュースが続くにつれ爆笑してしまった。
突っ込みどころはたくさんある。
この「金」がどういう性格なものなかさっぱりわからない(選挙絡みの資金であるかのような名目を指示しているが、なんの対価なのだかは書いていない)。つまり、合法的な金である可能性だってある。この時点での堀江前社長は犯罪者ではないのだから、そこからお金をもらうこと自体は問題がない。
また、この中で武部幹事長次男とされる部分は、名前だけが記載されている。これを武部幹事長次男だと特定したのは「情報提供者からの(武部氏の二男だとの)証言による」というだけ。なんだそりゃ。
しかし、なによりも問題なのは、このメールが本物であるという信憑性が限りなく低いということだ。
では、このメール本体を見てみよう。
永田氏が明かした「受信日時」は2005年8月26日午後3時21分35秒、衆議院選挙中だ。ところが、テレビ朝日によるとこの3分後に堀江前社長は選挙区で遊説中のテープが残っている。その前後もクルーや支持者、スタッフが周囲にいた筈で、パソコンを使っていればそれこそ鬼の首をとったようにテレビ朝日は報道しているだろう。
また、堀江前社長は度々、密着取材されているが、モバイル環境でメールをうつ姿は、少なくとも近年は見かけられていない。そのかわりに彼が使っているのは、携帯電話だ。
となると、堀江前社長なら3分もあれば携帯からこの程度の文章はうてる筈。それだっ! ってことになる。だが、違和感はある。このメールには、携帯メールにありがちな約束事が入っていない(数字の全角/半角、行頭下げ、複数空改行、署名などのスタイル)からだ。ただ、これは、堀江氏の普段のメールのスタイルを知らないから、確証ではなく心証どまりだが……
それと、一部で「受信日時」だからテレビ朝日の報道は関係ないという声が出ているが、これは間違い。メールの「受信日時」はPC(クライアント)がうけとった時間ではなく、メールサーバが受信した日時だ。そして、通常は送信日時と数十秒から数分程度しかずれるものではない。
……と、ここまで書いていたら、民主党がメールのプリントアウトの黒塗のコピーを公開。すると、彼らが「受信日時」と称していたものが「Date」ヘッダであったことがわかった。つまり、「送信日時」だ。これは堀江氏が遊説中の時間であることはいうまでもない。そして、同時にこの程度のことも民主党は理解していないというIT音痴ぶりを示している。
更に、ヘッダにはX-SenderとX-mailerが印刷されているが、携帯電話からのメール送信では通常はつかない筈だ。
つまり、これは携帯から送信されたという可能性が非情に低いのだ。
民主党、自爆してるのに気づいているか??
が、流出(発覚)をおそれて、堀江氏がメールヘッダを偽造したという説も出ている。内容がこんなにわかりやすいのにわざわざそこだけ偽造する意味が不明だ。内容を暗号にでもするほうがよほどいい。
あるいは、タイマー送信した、とすれば受信時間の矛盾は解決することもできるが、これもそこまで細工しているのに中身に一切の細工がないということへの説明にはならない。
とはいえ、堀江氏が携帯からWebメールを使用したり、PDAをもっていたりして、わざとああいうPCと同じような書式で入力したという可能性は0ではない(随分な確率だろうが)。
それを解明するのは簡単だ。メールヘッダを開示すればよい。それでどこ(なに)からいつ送信したのか、どのような経路できたのか、全て記載されているからだ。
ところが、永田議員、このメールはプリントアウトでもらったのだという(16日夜の日本テレビ系「きょうの出来事」より))。それも限られたヘッダしか印刷されていない。それも、入手した時点で黒塗されている部分があるのだという。
メールヘッダが全てあれば、経由したメールサーバやメールIDなど様々な情報が記載されているので、でトレーサビリティをもつことができる。しかし、どうもOutlookExpressで印刷されたらしい、限られたヘッダしか表示されていない「プリントアウト」では真贋を区別するための情報が全く存在していない。
なにせ、受け取ったと称するメールを偽造するのは簡単だ。メールヘッダを手打ちしたテキストを製作し、それをメールソフトで「インポート」すればいっちょあがり。知識は必要だが、日本でも万人単位でもってる程度の知識で十分なのだ。
そうなると、これは入手ルートを遡って、オリジナルのメールデータでヘッダを調査するのがよいということになる。
が、永田議員がそれを入手したのは「元フリー記者」(どうでもいいが、「元」はフリーにかかっているのか、記者にかかっているのか、どちただ?)から。そのフリー記者の入手先であるオリジナルの情報提供者とは会ったことがない。そして、名前は明かせないという(いずれも16日夜の日本テレビ系「きょうの出来事」より)。
……えーと、こういうのは世間では出所不明、というような気がするんですが……
気をとりなおして。
じゃあ、メールの内容を裏付ける傍証があれば、信憑性はあることになろう。
では、事実を知るうる立場の人間たちの発言(コメント)を拾ってみよう。
武部氏、自ら二男に電話をかけるが、二男は金銭授受疑惑を否定。側にいて受話器を渡された予算委の茂木敏充理事が「そういう事実はありますか」と改めて問いかると二男は重ねて「ありません」と否定した。
東京地検伊藤鉄男次席検事「メールの存在および指摘された事実関係について、当庁では全く把握していない」
堀江前社長は接見した弁護人に、「メールも送っていなければ、金も払っていない」と全面否定。
ライブドア広報グループ「選挙は堀江(前社長)が個人でやっていたことで、会社としてコメントすることはない。指摘された事実については把握していないし、事実かどうか分からない」
どれも否定ばかりで傍証にならない。
じゃあ、当の永田氏は決定的な証拠を握っているのか?
「少なくともメールのやり取りが行われたことが明らかになった」
えーと、メールのやりとりだけではダメですよね。
論点はメールをやりとりしたかどうかではなく、お金が動いたかどうかですから。
「(金融機関名、口座名、日時などの)証言を得ている」
……確か、本来の情報提供者には会ってないといってましたよね。
ということは、この「証言」っていうのは誰からのもの?
普通に考えたら二次、三次情報っていうことで、世間では伝聞というと思うんですが。
一方で永田氏は物証について「現段階では言えない」なんて受け答えしてるんですが、これ、普通は「もってない」時の言い訳にしか聞こえないだろう。
持ってるんだったら、大々的に「もってる」けど「今は出せない」っていう言い方をすればいいのだから。
では、なぜ、永田氏はこのメールを本物だと思ったのか。
曰く「情報提供者が信頼できる」「フォーマットがライブドアが使っているものと酷似」というのが理由だという。
だが、一次情報提供者とは会ったことがないといっているし、それが明かせないというのだから、百歩譲って永田氏の理由になったとしても、他者を納得させる理由にはならないことはいうまでもない。そして、後者についても、こんなテキストメールのどこにフォーマットがあるというのか?? せめて、堀江社長の独特のシグネチャでもあればよかったのだろうが……。まさか、OEでの印刷の形を見てライブドア社内と一緒だとかいってるんじないよなぁ
いずれにしても、現時点では出所がはっきりしない、容易に偽造しうる、傍証がない文章ということになる。
こういうのは普通、怪文書というのだが。
こんなものを国会でだしてしまって、本当に大丈夫なのか、永田!?
だまされてないか??
さて、そんな状態での民主党の追求は続いている。
が、民主党の言い草はあまりに酷い。公党とは思えない低脳ぶりだ。
予算委員会で、民主党の馬淵澄夫議員は説明責任は政府、与党にあると指摘した。
そんなバカな。
「お前は殺人犯だ」
「違う。その証拠はあるのか?」
「証拠はお前が出せ」
……こんなやり取り、ありえないでしょ?
第一、「なかった」という証明は「悪魔の証明」と呼ばれて、極めて難しいこととされている。挙証責任は問題を告発した方にあるというのは常識だ。
しかし、民主党は党全体で説明責任が政府・与党にあるという態度らしい。
永田議員は「銀行に資金移動記録を提出させる国政調査権の発動が確実に行われるとわかれば、必要な情報を提供する」と述べ、「(与党側が)それを拒否するのは、やましいところがあるのだろう」と語ったというが、これも滅茶苦茶。
確たる証拠もないのに、国政調査権を発動するなど権利の濫用でしかない。疑うに十分な証拠があって、はじめて発動するのがあたりまえだ。
これをたとえるならば、捜査令状を要求しておきながら、その証拠はない、令状が確実に出されるとわかれば、必要な情報を提供する、と言っているのと同じなのだから。
更に委員会に先立つ理事会で自民党は「メールの日付の8月26日には堀江被告は広島県内で選挙運動中だった」と強調。民主党に対し(1)メールが同日に堀江被告によって発信されたこと(2)振込先として記載の人物が武部氏の二男であると特定できた理由(3)ライブドアからの資金振り込みの事実―などの証明を求めたのに、民主党側は「証明に応じたら、武部氏らの参考人招致を認めるのか」と反論したというが、これは反論じゃなくて言いがかりだ。
証拠を出して、検討して、説得力があるとなったところで、はじめて参考人承知となるのが当たり前だ。民主党は出してもいない証明の証拠能力を認めろというのか? それであれば、どんな問題でもでっちあげれば、どんなに貧弱な証拠でも参考人招致を実現できることになるではないか。
さらに、民主党野田佳彦国対委員長は小泉首相が「ガセネタ」と批判したことについて「行政のトップが国会審議で(質問した情報を)ガセネタとは何事か。根拠は武部氏がそう言っているからというだけのことで、とんでもない」と反論、自民党側に抗議したことを明らかにしたというが……。
武部氏は(信用できるかどうかはまた別として)次男個人と会社の口座の記録を全て調べた結果として金の動きはない、と言っているのである。ちゃんと調査はしたということになっているのであり、口頭でやってない、といっただけではないのだ。
これに民主党が対抗するには、口座番号は日付を示して、実際の記録を提出させることでなくてはいけない筈だ。そうすれば白黒はっきりつくのだから。
第一、今の「疑惑」とやらは、先にも述べたように怪文書レベルのものをベースとしているのだから、「根拠は永田がそう言っているからというだけのことで、とんでもない」のではないか?
後から証拠が出てきて、このメールが本物だということになる可能性は、もちろんある。
しかし、今、民主党が主張していることは出鱈目すぎる。
旧社会党のほうがまだマシな疑惑追及の仕方をしていた。
こんなことでは、永遠に政権をとることなどできないと知るべきであろう。
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