Nov 21, 2005
米中首脳会談についての社説を読む
■【主張】米中首脳会談 戦略的協調に限界みえる(産経新聞11月20日)
まずは最右翼から。
「経済成長と軍事力増強を続ける中国は、米国の一極支配に対抗する戦略を明確にしており、米中の協調には限界も見え始めたといえる」
「ブッシュ大統領は先の訪日中、台湾の民主化を称賛し、中国が開かれた民主国家になるよう期待を表した。中国は「重要な国」だが、真のパートナーではないという認識だ」
「米中首脳会談の陰には東アジアの安保と地域協力をめぐる戦略問題が隠れている」
として、米中のパワーゲームがはじまっていると説く。
そのパワーゲームにおいて、
「こうした中で、日本が米国との関係をより緊密化する必要がさらに強まっているといえよう」
とすることで、小泉内閣の日米同盟重視路線への支持を表明している。
まずはこれが真っ当な分析だろう。
[米中首脳会談]「『自由の拡大』を求めた大統領」(読売新聞11月20日)
次に右の読売。
「人権や民主化について厳しいスタンスをとってきたブッシュ政権だが、ここまで踏み込んだ発言はなかった」
「北京での発言は、経済の急速な発展に比べて、改善の兆しがなかなか見えない中国民主化へのいらだちを、率直に表明したものと言える」
として、読売も米中対立をクローズアップしている。
さらに、日米同盟について産経よりも行数を割いており
「ブッシュ大統領は京都での政策演説で日米同盟を「地域、世界の平和のためのアンカー(錨=いかり)」と位置づけ、アジアへの関与を強める方針を打ち出した」
「中国はアジア全域で影響力の拡大に腐心する一方、日米の同盟関係にくさびを打とうとしている。今後もそうした動きは続くだろう」
「日本はそうした中国の戦略に乗じられてはなるまい。日米関係を基軸に価値観を共有する域内諸国との連携を一層強める。それがアジアの安定につながる」
というように、日米同盟を基軸としてアジア覇権を狙う中国に対抗するのが日本のとるべき道だとしている。
産経とは裏表の社説であり、併せて一つと読んでもいいくらいだ。
社説:APEC パワーゲームはこれからだ(毎日新聞11月20日)
左ながらも比較的冷静さもみせる毎日。
今回の社説もそうした態度がみられる。
「(東アジア共同体は)APECと異なり米国を排除する枠組みである。中国の地域覇権形成に資するだけではないか、という警戒論が強まっている。ブッシュ米大統領はAPECを機に、日、韓、中、モンゴルを歴訪し首脳外交を展開している。明らかに、東アジア首脳会議に代表される「米国抜き」の動きをけん制する狙いだ」
「地域での覇権や勢力争いも目立ってきた。東アジア首脳会議は経済がテーマだが、まさに地政学的パワーゲームの舞台である」
として、パワーゲームであることを押し出してきている。
その上で
「日本はパワーゲームに十分な備えが必要だ。APECが「開かれた地域主義」をなぜ掲げているかを思い出したい。「アジアだけで」という発想も排除はしないが、その危険性は認識すべきだ。偏狭な地域主義に対しては、常に警告を発していく必要がある」
と結ぶのだが、これはどういう主張なのかがわかりにくいところだ。
日本のアジア外交においても日米同盟基軸というのを常に念頭におくべきだ、というものなのか、日本主導のアジア共同体構想に反対している(もっといってしまえば中国を利さないからつぶしてしまえという狙い)のか?
社説のタイトルからして「APEC」を前面に出したこともあるが、抑制的にしようとしたのか、あまり「社の説」としての価値がないのが残念だ。
更に今回は日経も見てみる。
「春から激化していた米中の経済・貿易摩擦はやや沈静化に向かう可能性も出てきた」
として、そもそも米中協調など崩れているとする。
更に
「政治問題での米中の攻防がこれから本格化することも予想される。米中両国は引き続き対抗と協力の「複雑な関係」(ブッシュ大統領)を維持しそうだ」
とし、米中は経済面で協力を残しつつ、政治的な対立は続くという認識を示す。
その証左として、以下のような事例を引く。
「ブッシュ大統領は「中国は社会、政治、宗教分野での自由を拡大する必要がある」として中国の民主化を求めた。同大統領は20日朝には北京市内のキリスト教会(プロテスタント系)で礼拝するという“示威行動”にも出た」
「胡錦濤主席は首脳会談後の記者会見で「中国の特色ある民主政治」を持ち出してこれに反論したが、その厳しい表情は会談での双方の応酬を物語っているようでもあった」
後者は主観ではるが、前者については政治的メッセージを読み取るべきだろう。
日本で金閣寺に“観光”したのとはわけが違う。
「交流を通じて中国の体制改革を促そうとするブッシュ政権と、経済カードや北朝鮮カードで米国を引き寄せようとする中国の虚々実々の駆け引きが強まりそうだ」
と結び、米中対立がアジア情勢の大きな流れであるとした。
一般に言われるような中国べったりの記事ではなく、他の社説では取り上げられていないような事例を掲載して、きちんとパワーゲームであることを解説して見せているのは評価できる。
ただ、この流れの中で、日本はどうあるべきかという視点がないのが残念なところだ。
さて、最後にひかえしは最左翼。
「主席が来年の早い時期に訪米することも固まった。日中の首脳が「靖国」をめぐって、信頼関係を築けないのとは対照的だ。」
「大統領は日中関係を念頭に「近隣諸国との良好な関係が重要」と述べた。中国に注文した形だが、小泉首相も耳が痛いところだろう」
出た! という感じで脈絡なく「靖国」である。
しかも、米から中への注文を、なぜか小泉首相も耳が痛い、とする。
小泉首相に注文があるならば、日米首脳会談で同じような台詞が出る筈だ。
それがないということは、米国は日中関係における関係悪化の「非」は主に中国側にあると表明しているのだということは、容易に理解できよう。
「今回、大統領は「米中は大切な貿易パートナーだ」と語った」
「政治的な自由の拡大など民主化を促しつつも、追い詰めるのを避けたのは「中国が経済的に豊かになれば、政治的な自由を求める声も大きくなる」という計算もあってのことだろう」
と、ここまでくれば、米国が表明したのは「政治的パートナーではない」ということであり、また、経済関係はとりあえず崩さないが、それは民主化工作であり圧力でありということだということになる。
が、なぜかこう続く
「今後、米国の対中政策が経済重視になるにせよ、安全保障面で中国への牽制(けんせい)を怠ることはない」
なぜこうなるかわからない。
実利はあるにしろ、経済もまた中国牽制の道具の一つとして米国は考えているという文脈と繋がらない。
クリントン政権のころからの「政治も経済も」という重視から「政治」が脱落して「経済だけ」になったのだから、「政治軽視(米中はパートナーではない)」という流れで理解するのが当然ではないだろうか。
「米中は一方で牽制しあいながらも、それぞれの実利で結びつき、アジアを中心にした経済的な発展の果実を分け合おうというしたたかさが見える」
「今回の米中会談で見えた実利志向をさらに強めることは、アジア全体の安定と繁栄にも寄与するはずだ」
と結ぶのは、「米中は実利で結びついて仲良くしてますよ。日本は米国に実は相手にされてないんですよ。早く中国のいうとおりにして、中国と同盟しましょう」ということがいいたいのだろう。
経済から中国を崩そうという米国の狙いを喝破しておきながら、こういう結論に達することができるのが謎だ。
ところで、今回の産経の社説に気になる部分が。
米国の懸念は中国がユーラシア大陸東部から東南アジアを含めた周辺外交を積極化、地域共同体への動きを加速していることもある。来月、マレーシアで開く第一回東アジア首脳会議もその一つだが、米国を排除した東アジア共同体構想は、小泉純一郎首相が提唱、日本がリーダーシップを取るからこそ、米国は黙認したといわれる。
この分析が本当だとすれば、日米同盟を利用しながらも、米国追従でない独自のアジア外交を行い、中国の覇権主義に対抗するという手をうったということになる。
対中政策ということで保守には賞賛され、独自外交ということで革新からも賞賛されなくてはいけないと思うのだが(笑)
いずれにせよ、第一回東アジア首脳会議には注目ということろだろう。
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