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Sep 12, 2005

第44回衆議院議員選挙

率直に言って驚いた。 自民党がここまで伸びるとは思っていなかった。 これは、優勢が伝えられていた自民党自身も思っていなかったほどの勝利だろう。 なにせ、自民1議席、損する 比例東京・名簿登載者足りず(産経新聞9月12日 = Sankei Web)という勝ちすぎて比例名簿登載者が足りずに社民党に議席を譲ってしまうという前代未聞の事態まで発生するほどなのだから。 保守層の間では、公明党に対する反発が根強く、自民党の単独過半数あるいは単独安定多数を望む声が大きかったが、あっさりとそれが実現してしまったことになる。ダイナミックに動きやすい小選挙区制度の特徴がよく出た選挙であり、日本憲政史上に残る選挙だったといえよう。

さて、選挙がはじまった当初、各社の社説を分析してみたので、選挙が終わっての社説を比較検討してみたい。

●産経新聞

タイトル:自民圧勝 極めて重い首相の責務 官邸主導で構造改革を貫け
自民党への評価:
日本の国の力を結集する仕組みを官邸主導で整えることも大きな課題だ。首相が郵政民営化でみせた覚悟と力量をもって、こうした課題に切り込むことに国民は強く期待している。
全選挙区に郵政民営化賛成候補を落下傘方式などで擁立したことは、「地盤、看板、かばん」という旧来型の立候補システムを変え、政策中心の選挙を貫いた。個人後援会中心の古い自民党を近代政党に変える契機になった。
小泉首相の歴史的な使命は、戦後日本を構造的に変革することにあるといえる。
民主党への評価:
なぜ、国民の心をつかめなかったのか、を真摯に受け止め、出直さなくてはならない。
小泉政権の課題:
税負担を封印するな
内閣官房を中心に国益を実現する仕組みを作り上げるのが小泉首相の課題である。
首相は究極の構造改革である憲法改正を主導する責任もある。

●読売新聞<

タイトル:[自民圧勝]「郵政以外の課題にも取り組め」
自民党への評価:
自民党の圧勝は、郵政民営化の賛否に絞った首相の劇場型手法が、予想以上に功を奏した
一つのテーマに限定して争うのは、本来、政権選択の選挙としては邪道だ。
民主党への評価:
民主党は、先の通常国会では、郵政民営化法案に対案も出さなかった。解散後になって、有権者の関心が高まると、“対案”を小出しにするという、「後出し」の対応に終始した。郵政労組の既得権益を擁護しているとの批判もあった。
政権公約(マニフェスト)選挙の本家を自任する民主党が、政策論争がそれなりに活発化すると、対応が混乱し、足元をすくわれたのは皮肉だ
小泉政権の課題:
参院の反対議員も、「民意」を無視することは出来まい。(郵政民営化関連)法案の早期成立を図るのは当然だ。
当面、取り組むべき最大の課題は、年金など社会保障制度改革だ。深刻な財政の改革も、これ以上先送りできない。さらには不安定かつ不透明な国際情勢にあって、外交・安全保障の問題に、どう対処するのか

●毎日新聞

タイトル:自民圧勝 国民の期待は「郵政」だけでない
自民党への評価:
今回の選挙は二つの顔を持っていた。一つは政権担当政党を選択する選挙という「大きな顔」、もう一つは郵政民営化の賛否を問う国民投票的な選挙という「小さな顔」だ。自民圧勝は、この両面で小泉政治が信任されたことを意味する。同時に、民主党の非力さを露呈した。
今回の圧勝も小泉純一郎首相が巻き起こした「風」によるところが大きい。体質が本当に強化されたのかどうかは「風」が去ったあとに試される
参院では自民党の過半数割れが続いており、公明党の協力がなければ政権運営はうまくいかない。力を増した小泉・自民党を政権内で制御する役割が高まった。
小泉・自民党は特定郵便局長OBらによる伝統的支持団体との関係を断つ潔さをみせた。党体質改革への決意をアピールする点で民主党の上をいっていた。これまでは民主党に傾斜していた無党派層を取り込み都市部で強さを見せたことが、それを裏付けている。
メディア効果を計算に入れた「小泉劇場」はあやうさを包含するが、政治の透明性を高めた点では評価していい
地元と縁のない落下傘候補が地方でも善戦した。人気投票の色彩が強かったとはいえ、利益誘導を求めがちだった有権者意識の変化をうかがわせる
民主党への評価:
死票が多く出る小選挙区制を併せ持つ現在の選挙制度では議席の変動が顕著に表れる。2大政党への流れが基本的に変わったわけではないだろう。
民主党は選挙戦に入ってから年金、子育て政策を前面に出して対抗したが、郵政改革でのわかりにくさが最後まで響いた。連合などの支持団体に遠慮したためだ。
既得権の再調整が迫られている中で、民主党は解党的出直しを強いられている。党改革に大胆に取り組み、それを党再建の第一歩にしなければならない
小泉政権の課題:
「郵政民営化こそすべての改革の本丸」と訴えてきた小泉首相にとって選挙後の最初の課題は特別国会で郵政民営化法案を成立させることだ。
少子高齢化が急速に進む中、年金、医療、介護などの社会保障政策と財源問題にどう取り組むのか。官僚機構の改革を断行する決意はどの程度か。膨大な借金を抱える国の財政をどう健全化させるのか。アジア外交をどう立て直し日米同盟との調和をどのように図るのか。
首相が「郵政」以外を語らないのは無責任だ。有権者はすべてを白紙委任したわけではないことを自覚し、任期中に優先的に取り組む政権課題をただちに明確に示すべきだ。

●朝日新聞

タイトル:小泉自民党圧勝 「改革」選挙の弾みと怖さ
自民党への評価:
郵政民営化にかける首相の気迫が保守政党のイメージを打ち破り、改革を望む民意を圧倒的につかんだ
民主党が強かった都市部で自民党はつぎつぎと議席を獲得した。農村部出身の議員たちが力を持ってきた党の体質が変わることを予感させる
国民の不安、さらにいっこうに変わろうとしない政治への不満。有権者の間に充満していたガスに火をつけたのは岡田民主党の「政権交代」ではなく、「政治を変える」という首相のメッセージだった
一つのテーマが起爆剤となったこのダイナミックな展開には、民主主義の可能性とともに、ある種の怖さや危うさも感じられる。わずかな票差でも議席数の差が大きくなりやすいのが小選挙区制の特徴とはいえ、ムードや風で選挙結果がここまで劇的に動くことには驚くほかない
民主党への評価:
民主党は無残なまでに出遅れた。
郵政改革で対案を出し遅れたことが、最後まで災いした。自民党の反対派もろとも、「古い政治」と片づけられてしまったかのようだ
90年代からの政治改革の流れは、2大政党による政権交代を可能にし、政治に緊張感を与えることに眼目があった。その一方の旗頭に成長した民主党には、こうした機運に安住する気分がなかったか。「新しい政治」を切り開くという旗を小泉首相に奪われてしまった
民主党は人事刷新にとどまらず、体質から見直していく必要がある。この党には、寄り合い所帯のもろさを見せまいと、亀裂を必要以上に恐れるきらいがあった。不一致をさらし、党内で真剣に議論する勇気を持たなければ、再生への道は開けない
小泉政権の課題:
少数意見に配慮し、健全な民主主義を維持していく重い責任を負ったことを忘れてもらっては困る。これまで以上に自制とバランス感覚が求められる。フリーハンドを得たと勘違いしてはならない
この選挙は、まぎれもなく民営化の是非を問う国民投票だった。それが圧倒的に信認された以上、郵政法案をすみやかに成立させるべきなのはいうまでもない。 この圧勝で小泉政治のすべてが信認されたと考えるのは間違いだ。なぜなら、首相は郵政以外の政策課題はほとんど語らなかったからだ。たとえば憲法改正や八方ふさがりの外交について、首相は争点からはずし続けた。白紙一任でお任せというわけにはいかない。
靖国神社参拝や中国や韓国との関係をどうするのか。この問題を抜きに、地域としてのアジアにどんな外交の絵を描いていくか、戦略を語ることは難しい。イラクにいる自衛隊をこのまま残すのかどうかの決断も迫られている。

基本的に、選挙前にスタンスをそのまま維持しているのが見て取れる。

産経新聞は、更に首相にリーダーシップを発揮することを求め、首相の権力強化を求めるとともに、憲法改正までを視野にいれるように要求している。
小泉自民党の「落下傘候補」も好意的に評価した。
一方、民主党にはけんもほろろという有様で、とにかく小泉政権による「国益実現」に期待するという形だ。
小泉政権を強く支持した形といえる。

読売新聞は、郵政の出遅れのみならず、民主党のマニュフェストを具体例をあげて批判。単に“小泉劇場”だけでなく、民主党自体の力不足が惨敗の理由にあげられるとしているところが他と異なる。
一方で、郵政一本に絞った小泉自民党の選挙戦略を「邪道」として批判。
民意を受けたことは評価しつつも、年金という内政や外交・安保も重要課題であるとして小泉政権に注文をつけた。
民主党が政権政党に値しないというような論調であり、自民党支持としつつも、小泉劇場は批判しているという形であろう。

毎日新聞になると、自民党圧勝の主因を“小泉劇場”だと位置づける。
そして、小泉政権が民意によって支持されたとし、落下傘候補も地域利益誘導型がら政策選挙への転換として評価。自民党が従来の支持団体との決別までして“改革”に走ったことも評価しており、むしろ、読売新聞よりも小泉への評価は高い。
一方、民主党には、二大政党への流れは基本的に変わっていないとして擁護。敗因はあくまで郵政での出遅れだとしているが、“労組への遠慮”を批判した。
民主党の擁護が大きいような気がするが、比較的冷静な論調である。しかし、今後の小泉政権への課題となってくると、「郵政以外を語らないのは無責任」「白紙委任ではない」として、小泉首相のリーダーシップ型政治を強く牽制。また、立て直すべきとした外交には、わざわざ「アジア」を冠しているのが、毎日らしいところだろう。

最後は朝日新聞。
小泉自民党の圧勝は、積極的支持よりも政治への不満がもたらした、一種の批判票であるという理屈らしい。それを「ムード」「風」として、まるで政策論争がなかったかのような切り口だ。さらには、ここまで一方的になったのは小選挙区制度の欠陥だといわんばかりで、「ダイナミズム」「政権交代」をお題目に、中選挙区を批判していたのはどこの新聞だといいたくなる。
一方、民主党の敗因は郵政での出遅れとした(毎日の社説にもいえることだが、郵政だけが民主党の敗因ではなく、マニュフェスト全体を見て判断した人間も少なからずいると思うのだが……)。同時に寄り合い所帯であることを批判し、民主党の体質改善を訴えている。
今後の小泉政権には「少数意見への配慮」「フリーハンドを得たと勘違いしてはならない」「これまで以上に自制とバランス感覚」を求め、リーダーシップの発揮を強く牽制した。更に、他社では具体的な単語が出ていない「靖国神社参拝」「中韓との関係」「イラク自衛隊」をあげているところは、さすが朝日というところか。
小泉自民党を批判したいのだが、圧倒的勝利に裏付けられた「民意」に配慮して、遠まわしな表現にとどめているというところだろう。

結局、今後も各新聞、スタンスは変えていかないということだ。
このバイアスを考慮して、今後の報道も見ていく必要があるだろう。

Posted at 10:50 in 政治 | WriteBacks ()
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