Aug 09, 2005

各新聞のスタンス

解散翌日の新聞各紙の社説を見て、今回の解散総選挙に対する各社のスタンスをさぐってみよう。

●産経新聞
総論:小泉自民支持、反民主党・反反小泉自民。郵政民営化を踏絵に、構造改革を論点として選挙を行うべき
解散論評:郵政民営化は日本の将来にとって必要不可欠な改革であり、衆院を解散して国民の民意を問うことはやむを得ない。
否決理由:自民党内の権力闘争を持ち込み、郵政法案を葬り去った。特定郵便局などの権益をすべてに優先させる人たちが存在する。
小泉政権評価:中途半端ではあるが、過去の政権が手を付けられなかった“タブー”に切り込んだ意義は大きい。国のかたちを整えてきた小泉政権の歴史的な意義を評価したい。
郵政民営化評価:自民党の集票基盤であり、族議員、官庁、特殊法人などで形成する既得権益を支えてきた。巨大な資金を市場メカニズムの外に置いて経済の活性化を阻害し、財政規律をも大きくゆがめてきた。民営化は小泉政権に限らず、いわば日本の課題。
選挙での自民党:自民党の賛成派と反対派を峻別し、自民党が改革政党になるチャンスである。国民から支持される真の保守政党に変えることは、政治の構造改革ともいえる。
民主党評価:結局、対案は出せなかった。労組の意向が最優先されたといわれても仕方なく、とても改革政党とはいえまい。国の根幹である安全保障などの基本政策もはっきりしていない。
選挙の争点:これからの日本にいかなる改革が必要かを熟慮して判断すべき

●読売新聞
総論:小泉批判も「自民党」は支持。反民主党。郵政民営化よりも内外交の懸案処理を争点として選挙をすべき。各党は正面から政策で争うべき。
解散論評:分かりにくい衆院解散劇。首相の決断は、戦後の憲政史を見ても、異様に映る。憲政の常道に反しないか、大きな疑念を残すものだ。
否決理由:(特に言及なし)
小泉政権評価:重要な外交課題にも、政治が適切に対応してきたとは言えない。
郵政民営化評価:郵政民営化法案は、不十分な点もあったが、日本の経済・社会の改革につながる重要な法案だった。
選挙での自民党:結党50年を迎える自民党は、立党以来の危機に直面している。
民主党評価:郵政国会では、郵政民営化法案の対案も出さず、支持団体の郵政労組への配慮から、現在の公社維持・結論先送りを主張し、存在感は希薄。法案否決も、自ら追い込んだのではなく、自民党の内紛に便乗しただけだったのではないか。
選挙の争点:財政再建や社会保障制度、安全保障、中韓両国との外交など、郵政民営化以上に重要な多くの課題に直面しており、郵政民営化問題だけが、争点と言うわけにはいかない。選挙後の新内閣は、重要課題に着実に取り組む懸案処理内閣でなければならない。その認識に立って、各党は、正面から政策で争うべきだ。

●毎日新聞
総論:満遍なく批判しながらも、特に反反小泉自民。小泉は批判しっぱなしだが、民主党にはややエール気味か。総選挙は郵政民営化だけでなく、内外交の重要課題をひとまとめにした国民投票。行き詰まった政治を変えるきっかけに。
解散論評:小泉首相も法案の中身は二の次で権力闘争意識をむき出しにした。首相本人が現状に限界を感じており、それを打破するため、実は元々、成立より選挙を望んでいたのではないか。
否決理由:小泉改革を現状のままの自民党の構成で続けていくのは限界が来た。首相支持率が低下し、党や派閥を無視してきた首相の政治手法や人事に対したまってきた不満が一気に噴き出した。小泉首相も法案の中身は二の次で権力闘争意識をむき出しにした。
郵政民営化評価:既に妥協を重ねた形ばかりの郵政民営化案を原点に立ち返って作り直すべき。郵政民営化は、ひいては「大きな政府か、小さな政府か」につながるテーマだ。
小泉政権評価:小泉改革は毎回、党側との妥協の産物ではあったが、一応の結論を出せた。内閣より党が力を握る二重権力構造解消のため内閣主導の政策決定を目指したのは間違いではないが、政府と与党の対決に活路を見いだす手法を続けるのは根源的に無理があった。首相も党も、政党の命であるはずの政策を軽視し、党内のねじれを放置してきたツケが、いよいよ回ってきた。
選挙での自民党:小泉首相が法案反対者を公認せず、その選挙区には新たな候補を擁立し、選挙後も組まない方針を打ち出したのは当然である。政策で大きな乖離がありながら、同じ自民党を名乗るという分かりにくい状況が、今度の内紛の結果、少しでも解消されるのであれば悪いことではない。郵政反対派内には選挙が終われば小泉首相を除いて一緒になればいいとの声が聞こえるが、これは有権者には分かりにくい姿勢と映るだろう。
=>公明党:早々と民主党との連立の可能性にも言及している公明党も「政権の枠組みは選挙結果次第」では済まされない。自民党との連立政権を継続するというのなら事前に有権者に明確にしておく必要がある。
民主党評価:今回の解散は、民主党が政権を追い込んだのではない。自民党分裂という「棚ぼた」式で政権交代の可能性が取りざたされているに過ぎないのだ。郵政民会法案政府案の批判だけに終始したのは、党内の労組系議員を中心に、自民党と同様、民営化反対派を抱え、対立を回避するためだと既に有権者も見抜いている。民主党も、そんな党内のねじれを解消すべき。
選挙の争点:年金、財政再建と増税、政治とカネ、首相の靖国参拝、行き詰まった対中国・韓国外交、北朝鮮の拉致問題と核開発、国連安保理常任理事国入り、イラク派遣自衛隊、憲法改正といった重要課題をひとまとめにした国民投票。それぞれの政策を各党が競うようにすべき。誰が本当に実のある改革を進めてくれるのかを見極める総選挙にしたい。

●朝日新聞
総論:反小泉が鮮明。他にあまり言及がない。選挙の争点は、次期政権担当選択?
解散論評:小泉改革の本丸とされた郵政民営化が頓挫したのだから、本来なら総辞職に値する。だが、これまでの改革路線に間違いはないとする以上、政権の存亡をかけて国民の信を問うのも一つの道だ。それにしても、分かりにくい解散だ。
否決理由:小泉首相と自民党の一部が激突し、双方とも引っ込みがつかなくなった。その揚げ句に、衆院解散の脅しが現実になった。党の公約に公然と造反した反対派の行動は、政党政治の原則からいって許されない。だが、党内をまとめきれなかったリーダーとしての責任を、首相はどう考えているのか。「抵抗勢力」との対立をあおり、摩擦熱で世論の支持を集める「小泉劇場」の手法が行きつくところまで来た。
郵政民営化評価:(特になし)
小泉政権評価:社会保障制度の立て直しは財源論議で行き詰まっている。政治資金の透明化も自民党の消極姿勢で改善の気配がない。外交は八方ふさがり。靖国参拝問題で中韓との亀裂はかつてなく深い。自衛隊を派遣したイラクの混乱ぶりは目に余る。国連安保理の常任理事国入りは、近隣諸国や米国の支持さえ得られず、絶望視されている。この政権には外交戦略があるのだろうかという疑問すらつきまとう。
選挙での自民党:自民党はがたがたの状態
民主党評価:民主党の責任は重い。争点を明確に打ち出す一方で、政権公約をきちんとつくり、「もう一つの選択」を具体的に示すべきだ。
選挙の争点:4年余の小泉政治の総体を採点しなければならない。れからの日本の舵(かじ)とりをだれに任せるのか、次の政権を選択する選挙ということだ。党内対立から発した解散・総選挙であることが、問題をわかりにくくしている。選挙戦を通じて、各党もわれわれも争点を整理していく必要がある。

各社それぞれに立場違うのがよくわかる。
読売は中曽根との関係が深いためか、反小泉自民への批判がほとんどない。小泉批判は解散したという事実に対してが中心である。おそらく、小泉に対しては批判をもっと加えておきたいのだろうが、それで自民党(保守政権)自体が沈んでしまっては、元も子もないといったところではないだろうか。郵政法案そのものにあまり触れず、また、それを上回る重要課題があるなどしているのは、「自民党」への配慮であろうか。
毎日は比較的中立的であり、理屈的にもおかしなところはない。ただ、郵政利権の話にふれず、否決・解散を自民党内の権力争いという定義付けしているとことが目立つ。
また、読売と同様に「内外交の重要課題」を争点としてあげているのだが、その中身が異なる。読売が取り上げていない“重要課題”では、「首相の靖国参拝」「イラク・サマワに派遣した自衛隊をどうするか」「憲法改正」などがとりあげられているし、同じものをとりあげていても「中韓両国との外交」(読売)に対して「行き詰まった対中国・韓国外交」(毎日)という表現をしており、毎日のスタンスがあらわれている。
産経と朝日は不偏不党というマスコミの範疇を左右それぞれにはみださんばかりだ。
産経は小泉首相の主張をほぼなぞったような形である。民主党をばっさりと批判する一方で、反小泉派を自民党から放逐し、真の保守政党誕生という政界再編を主張している。
一方、朝日のほうは……いつもの通り反小泉。外交について他社の社説とは異なり、わざわざ項目をたてている。靖国、イラク自衛隊派遣については小泉が悪いと明確に談じているのもいつもの通りか。
しかし、文章量の割に内容がスカスカだし、論旨が混乱している。
例えば、小泉が解散にふみきったことについては
「政権の存亡をかけて国民の信を問うのも一つの道だ。」
と筋が通っていると当初は主張する。
「朝日新聞社の先月末の世論調査では、郵政法案が通らなかった場合の解散・総選挙に53%が賛成し、反対の28%を大きく超えた。世論の多くが政治の行き詰まりを感じている」
ともいい、解散が世論にそったものだということまで示してくれている。
が、その直後に
「それにしても、分かりにくい解散だ。」
と続ける。
国民が支持している行為を「分かりにくい」というのはどういうことだろうか。主語をいれると「朝日新聞にとって分かりにくい」ということとしか文章が繋がらないのだが、そういう意味ではあるまい。
また、選挙の争点についても
「首相は「改革に抵抗する勢力との戦い」という構図で選挙に臨む。」
「有権者にとっては、これからの日本の舵(かじ)とりをだれに任せるのか、次の政権を選択する選挙ということだ。」
としながら、結びでは
「党内対立から発した解散・総選挙であることが、問題をわかりにくくしている。選挙戦を通じて、各党もわれわれも争点を整理していく必要がある。」
として、投げっぱなしである。
社説は、ある意味で新聞の顔なのだから、もっとまともな論旨を組み立ててほしいものだ。

いずれにせよ、今後の報道についても、各社はこのようなスタンスを表明した上でのものであるということを理解してから解釈すべきであろう。

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