Feb 18, 2006
大丈夫か、永田議員?
衆議院予算委員会で、民主党・永田議員が、堀江前ライブドア社長が自民党・武部幹事長次男に三千万円の振込を指示したメールというものを“暴露”。政局を震撼させた──といいたいところだが、私はTVでのニュースが続くにつれ爆笑してしまった。
突っ込みどころはたくさんある。
この「金」がどういう性格なものなかさっぱりわからない(選挙絡みの資金であるかのような名目を指示しているが、なんの対価なのだかは書いていない)。つまり、合法的な金である可能性だってある。この時点での堀江前社長は犯罪者ではないのだから、そこからお金をもらうこと自体は問題がない。
また、この中で武部幹事長次男とされる部分は、名前だけが記載されている。これを武部幹事長次男だと特定したのは「情報提供者からの(武部氏の二男だとの)証言による」というだけ。なんだそりゃ。
しかし、なによりも問題なのは、このメールが本物であるという信憑性が限りなく低いということだ。
では、このメール本体を見てみよう。
永田氏が明かした「受信日時」は2005年8月26日午後3時21分35秒、衆議院選挙中だ。ところが、テレビ朝日によるとこの3分後に堀江前社長は選挙区で遊説中のテープが残っている。その前後もクルーや支持者、スタッフが周囲にいた筈で、パソコンを使っていればそれこそ鬼の首をとったようにテレビ朝日は報道しているだろう。
また、堀江前社長は度々、密着取材されているが、モバイル環境でメールをうつ姿は、少なくとも近年は見かけられていない。そのかわりに彼が使っているのは、携帯電話だ。
となると、堀江前社長なら3分もあれば携帯からこの程度の文章はうてる筈。それだっ! ってことになる。だが、違和感はある。このメールには、携帯メールにありがちな約束事が入っていない(数字の全角/半角、行頭下げ、複数空改行、署名などのスタイル)からだ。ただ、これは、堀江氏の普段のメールのスタイルを知らないから、確証ではなく心証どまりだが……
それと、一部で「受信日時」だからテレビ朝日の報道は関係ないという声が出ているが、これは間違い。メールの「受信日時」はPC(クライアント)がうけとった時間ではなく、メールサーバが受信した日時だ。そして、通常は送信日時と数十秒から数分程度しかずれるものではない。
……と、ここまで書いていたら、民主党がメールのプリントアウトの黒塗のコピーを公開。すると、彼らが「受信日時」と称していたものが「Date」ヘッダであったことがわかった。つまり、「送信日時」だ。これは堀江氏が遊説中の時間であることはいうまでもない。そして、同時にこの程度のことも民主党は理解していないというIT音痴ぶりを示している。
更に、ヘッダにはX-SenderとX-mailerが印刷されているが、携帯電話からのメール送信では通常はつかない筈だ。
つまり、これは携帯から送信されたという可能性が非情に低いのだ。
民主党、自爆してるのに気づいているか??
が、流出(発覚)をおそれて、堀江氏がメールヘッダを偽造したという説も出ている。内容がこんなにわかりやすいのにわざわざそこだけ偽造する意味が不明だ。内容を暗号にでもするほうがよほどいい。
あるいは、タイマー送信した、とすれば受信時間の矛盾は解決することもできるが、これもそこまで細工しているのに中身に一切の細工がないということへの説明にはならない。
とはいえ、堀江氏が携帯からWebメールを使用したり、PDAをもっていたりして、わざとああいうPCと同じような書式で入力したという可能性は0ではない(随分な確率だろうが)。
それを解明するのは簡単だ。メールヘッダを開示すればよい。それでどこ(なに)からいつ送信したのか、どのような経路できたのか、全て記載されているからだ。
ところが、永田議員、このメールはプリントアウトでもらったのだという(16日夜の日本テレビ系「きょうの出来事」より))。それも限られたヘッダしか印刷されていない。それも、入手した時点で黒塗されている部分があるのだという。
メールヘッダが全てあれば、経由したメールサーバやメールIDなど様々な情報が記載されているので、でトレーサビリティをもつことができる。しかし、どうもOutlookExpressで印刷されたらしい、限られたヘッダしか表示されていない「プリントアウト」では真贋を区別するための情報が全く存在していない。
なにせ、受け取ったと称するメールを偽造するのは簡単だ。メールヘッダを手打ちしたテキストを製作し、それをメールソフトで「インポート」すればいっちょあがり。知識は必要だが、日本でも万人単位でもってる程度の知識で十分なのだ。
そうなると、これは入手ルートを遡って、オリジナルのメールデータでヘッダを調査するのがよいということになる。
が、永田議員がそれを入手したのは「元フリー記者」(どうでもいいが、「元」はフリーにかかっているのか、記者にかかっているのか、どちただ?)から。そのフリー記者の入手先であるオリジナルの情報提供者とは会ったことがない。そして、名前は明かせないという(いずれも16日夜の日本テレビ系「きょうの出来事」より)。
……えーと、こういうのは世間では出所不明、というような気がするんですが……
気をとりなおして。
じゃあ、メールの内容を裏付ける傍証があれば、信憑性はあることになろう。
では、事実を知るうる立場の人間たちの発言(コメント)を拾ってみよう。
武部氏、自ら二男に電話をかけるが、二男は金銭授受疑惑を否定。側にいて受話器を渡された予算委の茂木敏充理事が「そういう事実はありますか」と改めて問いかると二男は重ねて「ありません」と否定した。
東京地検伊藤鉄男次席検事「メールの存在および指摘された事実関係について、当庁では全く把握していない」
堀江前社長は接見した弁護人に、「メールも送っていなければ、金も払っていない」と全面否定。
ライブドア広報グループ「選挙は堀江(前社長)が個人でやっていたことで、会社としてコメントすることはない。指摘された事実については把握していないし、事実かどうか分からない」
どれも否定ばかりで傍証にならない。
じゃあ、当の永田氏は決定的な証拠を握っているのか?
「少なくともメールのやり取りが行われたことが明らかになった」
えーと、メールのやりとりだけではダメですよね。
論点はメールをやりとりしたかどうかではなく、お金が動いたかどうかですから。
「(金融機関名、口座名、日時などの)証言を得ている」
……確か、本来の情報提供者には会ってないといってましたよね。
ということは、この「証言」っていうのは誰からのもの?
普通に考えたら二次、三次情報っていうことで、世間では伝聞というと思うんですが。
一方で永田氏は物証について「現段階では言えない」なんて受け答えしてるんですが、これ、普通は「もってない」時の言い訳にしか聞こえないだろう。
持ってるんだったら、大々的に「もってる」けど「今は出せない」っていう言い方をすればいいのだから。
では、なぜ、永田氏はこのメールを本物だと思ったのか。
曰く「情報提供者が信頼できる」「フォーマットがライブドアが使っているものと酷似」というのが理由だという。
だが、一次情報提供者とは会ったことがないといっているし、それが明かせないというのだから、百歩譲って永田氏の理由になったとしても、他者を納得させる理由にはならないことはいうまでもない。そして、後者についても、こんなテキストメールのどこにフォーマットがあるというのか?? せめて、堀江社長の独特のシグネチャでもあればよかったのだろうが……。まさか、OEでの印刷の形を見てライブドア社内と一緒だとかいってるんじないよなぁ
いずれにしても、現時点では出所がはっきりしない、容易に偽造しうる、傍証がない文章ということになる。
こういうのは普通、怪文書というのだが。
こんなものを国会でだしてしまって、本当に大丈夫なのか、永田!?
だまされてないか??
さて、そんな状態での民主党の追求は続いている。
が、民主党の言い草はあまりに酷い。公党とは思えない低脳ぶりだ。
予算委員会で、民主党の馬淵澄夫議員は説明責任は政府、与党にあると指摘した。
そんなバカな。
「お前は殺人犯だ」
「違う。その証拠はあるのか?」
「証拠はお前が出せ」
……こんなやり取り、ありえないでしょ?
第一、「なかった」という証明は「悪魔の証明」と呼ばれて、極めて難しいこととされている。挙証責任は問題を告発した方にあるというのは常識だ。
しかし、民主党は党全体で説明責任が政府・与党にあるという態度らしい。
永田議員は「銀行に資金移動記録を提出させる国政調査権の発動が確実に行われるとわかれば、必要な情報を提供する」と述べ、「(与党側が)それを拒否するのは、やましいところがあるのだろう」と語ったというが、これも滅茶苦茶。
確たる証拠もないのに、国政調査権を発動するなど権利の濫用でしかない。疑うに十分な証拠があって、はじめて発動するのがあたりまえだ。
これをたとえるならば、捜査令状を要求しておきながら、その証拠はない、令状が確実に出されるとわかれば、必要な情報を提供する、と言っているのと同じなのだから。
更に委員会に先立つ理事会で自民党は「メールの日付の8月26日には堀江被告は広島県内で選挙運動中だった」と強調。民主党に対し(1)メールが同日に堀江被告によって発信されたこと(2)振込先として記載の人物が武部氏の二男であると特定できた理由(3)ライブドアからの資金振り込みの事実―などの証明を求めたのに、民主党側は「証明に応じたら、武部氏らの参考人招致を認めるのか」と反論したというが、これは反論じゃなくて言いがかりだ。
証拠を出して、検討して、説得力があるとなったところで、はじめて参考人承知となるのが当たり前だ。民主党は出してもいない証明の証拠能力を認めろというのか? それであれば、どんな問題でもでっちあげれば、どんなに貧弱な証拠でも参考人招致を実現できることになるではないか。
さらに、民主党野田佳彦国対委員長は小泉首相が「ガセネタ」と批判したことについて「行政のトップが国会審議で(質問した情報を)ガセネタとは何事か。根拠は武部氏がそう言っているからというだけのことで、とんでもない」と反論、自民党側に抗議したことを明らかにしたというが……。
武部氏は(信用できるかどうかはまた別として)次男個人と会社の口座の記録を全て調べた結果として金の動きはない、と言っているのである。ちゃんと調査はしたということになっているのであり、口頭でやってない、といっただけではないのだ。
これに民主党が対抗するには、口座番号は日付を示して、実際の記録を提出させることでなくてはいけない筈だ。そうすれば白黒はっきりつくのだから。
第一、今の「疑惑」とやらは、先にも述べたように怪文書レベルのものをベースとしているのだから、「根拠は永田がそう言っているからというだけのことで、とんでもない」のではないか?
後から証拠が出てきて、このメールが本物だということになる可能性は、もちろんある。
しかし、今、民主党が主張していることは出鱈目すぎる。
旧社会党のほうがまだマシな疑惑追及の仕方をしていた。
こんなことでは、永遠に政権をとることなどできないと知るべきであろう。
Jan 25, 2006
民主党が自民党を追及する愚
ライブドア・堀江社長が逮捕されたことを受けて、それを擁立した自民党の責任を追及すると民主党が息巻いている。
ライブドア問題、民主党が調査追及チームを設置(読売新聞1月24日)
「小泉改革の中で、堀江容疑者のような人間を時代の寵児(ちょうじ)として、もてはやしたのはどういうことなのか、追及していきたい」
「武部氏の証人喚問を求めるべきだ」
はあ?
人物を見抜けなかった、ということについては責められる部分はあろう。
だが、それが“小泉政治の失策”とされると???だ。
堀江社長が犯罪者だとわかっていて(今でも推定無罪なのだが)応援したわけではないのだがら、政治問題化させて国会で時間を費やすほどの問題ではなかろう。
最も”評価”しても「自民党系無所属新人の不祥事」とでもするべきで、それがどうして証人喚問になるのか意味不明。第一、証人喚問して、何を聞くのか?
「見込み違いですいません」
とでも聞きたいのか? わけわからん。
それに、民主党については、どの口でそんなことを言っているのか。
同じ選挙で擁立していた民主党所属現職議員が、覚せい剤で逮捕・有罪判決を受けたのはついこの間のことだ(→日刊スポーツ12月16日)
しかも、これは「現職」で「所属」なのだ。民主党の“責任”という意味では、自民党系無所属新人(落選)と自民党の関係より、よほど重いではないか。
他人に求めるのであれば、まず自らを律するべきだ。
まず、小林前衆院議員を擁立した責任を民主党がきっちととってからにすべきだろう。
ダブルスタンダードもはなただしい。
Jan 07, 2006
Cold War
あけましておめでとうございます。
遅ればせながら、今年の初エントリということで、本年もよろしくお願いします。
さて、本題。
冷戦という時代は、安全ではあったかもしれないが、決して平和ではなかった。
全面武力戦という現象がないだけであり、戦いそのものは続いていた。
そして、アメリカはレーガン大統領のSDI計画などでソ連を追い詰め、これを崩壊させて冷戦に勝利したのである。
が、米ソという超大国間の冷戦は終わっても、地域レベルでの“冷戦”はまだそこかしこに点在している。その、最も激しい地域の一つが極東アジアだ。
ここでは中国と日米同盟の冷戦が進行中であることはいうまでもないだろう(ついでにロシアも介入の機会をうかがっているわけだが)。
中国の在上海日本総領事館の男性館員が2004年5月、中国(のおそらく公安)から脅迫されて、国家機密を守るために自殺してたという事件報道は、まさにこの冷戦を象徴する事件といえよう。
事件そのものは、既に多くのサイトでとりあげられているので、ちょっと違う観点から私は考えてみたい。
さて、ここからは、みんな大好き陰謀論。ソース元ナシで推測だけなのでご注意。
今回の事件、もともとは週刊新潮の記事からはじまっている。
しかし、週刊新潮にそんな取材力があるとは私には思えない。
となると、誰がリークしたのかかだ。
従来からの外務省の態度から考えると、外務省側からこのような情報が漏れるとは考えにくい。
この情報を入手できる中でもっとも得をする勢力を考えてみれば──官邸筋、と考えるのが妥当ではないだろうか?
この情報が一般にリークされれば、世論が反中に傾くのは必至。
つまり、親中国派であるチャイナスクールに対し、対中強硬派である官邸筋(小泉首相、麻生外相、安部官房長官、場合によっては町村前外相)が強烈に圧力をかけているのではないかと予想するのだ。
実際、官邸はこの事件に対し、火消しどころか中国を非難する声明を発表し、また、中国大使の人事をめぐってチャイナスクールと官邸が対立しているらしいことも伝わっている(→読売新聞1月1日)。
今、強烈なせめぎあいが、チャイナスクールと官邸の間で行われているのではないだろうか。中国大使人事でわかるように、官邸が今一歩のところまできてるのではないだろうか。
私にはそんな気がしてならない。
Nov 28, 2005
西村真悟衆院議員逮捕
民主党内最右翼として知られる西村真悟議員が逮捕された。
弁護士出身(資格として現役弁護士)である西村氏の法律事務所元職員の非弁活動(無資格での弁護士活動)を知りながら弁護士の名義を使用させていたというのが容疑である。
主張自体は当サイトと同じようなものが多く注目していた(論理展開あるいはその前提となる知識には?なところがあったが)。
が、有罪が確定するのであれば、政治家としての彼を応援すべきではない。
西村氏の“政界復帰”を認めるのであれば、他の“有罪議員”もまた、政界復帰が認められるべきということになる。
しかし、私は到底、そのような気にはならない。
西村氏の主張に賛同できるからといって政界復帰を支援するのであれば、例えば、辻本議員や鈴木宗男議員の当選について“罪”を理由に責めることはダブルスタンダードになるからだ。
ところで、この西村議員逮捕について「陰謀論」がきかれる。
脛に傷のない政治家はいない、といわれるような世界であるから、任意のタイミングで特定の人物のスキャンダルを出すことは可能といわれている(が、報復がありえるので、おいそれとはできない)。
では、今度の西村氏についてはどうなのか?
陰謀論というからには、陰謀をしかけた人間が必要である。
まず、小泉政権or自民党という“体制側”からとした場合。
西村議員はその過激な言動からメディアへの露出こそ多いものの、民主党内での影響力は極めて低い。保守系ブログからも「保守寄せパンダ」と呼ばれる始末だ。
だから、彼をパージしても、民主党「内」に与える影響は少ない。むしろ、西村氏の存在は民主党左派(旧社会党系など)との意見の違いが浮き立ち、「統一されていない民主党」というイメージを与えることに貢献していた。
小泉政権・自民党と同様(あるいはそれ以上の)右派言動をすることで、支持層を取り込むという見方はあるが、前回の選挙でも小選挙区で落選している。彼の言動がマスコミでとりあげらればとりあげられるほど、その言動は民主党にまったく影響力がないことが選挙民の前に晒されてしまった結果だといえよう。
したがって、今の小泉政権・自民党にとって、スキャンダルあばきしてまで攻撃するだけの価値は西村氏にはないと考える。
一方、民主党という“身内”とした場合はどうか?
その場合、異分子を排除するための陰謀ということになる。
いくら選挙が遠く、比例選出のため補充がきくとはいえ、イメージダウンは甚だしい。
うるさい存在ではあるが、党内での影響力はない人物(このあたりは河村たかしも似ているが)をパージするのは、デメリットが大きすぎるだろう。かつての自民党のように、派閥連合政党としての主導権争いの中で出てくるスキャンダルのような意味をもちえないのだから。
党勢立て直しをはからなくてはならない今、地方組織の一層の離反を招きかねないようなスキャンダルは民主党にとっては避けたい筈だ。
積極的な仕掛をしたとは思えない。
また、「政府が日朝国交正常化を加速するために拉致問題の強硬派を排除しようとしている」という見解はどうか。
それならば、そもそも内閣改造で安部氏を外すか低いポジションにおき、福田氏でも起用しているだろうし、強硬派の麻生氏を外相に据えたりはしまい。西村氏より、それらのほうがよほど影響力がある。
よって、私としては「陰謀論」は支持しない。
ただ、消極的な意味での陰謀──この情報を抑え込まなかったということはるかもしれない。
敵失をカバーする気は、もとより自民党にはないだろうが、民主党にしても「西村氏であれば、情報を抑え込むリスクは背負いたくない」という程度の判断はあったかもしれない。
いずれにしても、その程度であろう。
耐震強度偽造
耐震強度偽造問題がここ数日のトップニュースとなっている。
これを「官から民へ」の成果だと、小泉政権攻撃の材料としようとしている向きもあるが、私はそういう見方には同意しない。このあたりは、建築関係の技術者である青い炎の日記さんと見解を同じくする。
実際、神奈川県では、平塚市も市内のホテルの構造計算書の偽造を見逃していたことが発覚しているのだし。
で、私としてはちょっと別の面から論じてみたい。
建築業界の現状というものについてだ。
さて、この構造設計という仕事、どの程度のお金になるのか見てみる。
ソースとしては、毎日新聞の記事が手がかりになる。
耐震偽造:構造部分のコスト削減、「建築主、気にしない」(毎日新聞11月20日)
これによれば、問題の設計士は「5年間で約110棟の構造計算」をしていたという。つまり、年平均22件。同事務所の年商は約2000万。実際にはこれ以外の収入もあっただろうことを考えると、1件あたり80万円くらいの収入か。
で、同じ記事によれば「個人事務所であれば、マンションの構造設計なら通常年間3~4棟、よくやっても年間10棟が限界だろう」とある。間をとって、「頑張った」として年8件くらいだとすると、年商640万。
……ありゃ。
40代サラリーマンの平均年収くらいか? と思うのは早計。
これはあくまで「年商」なので、「年収」はこれを下回る。
利益率は不明だが、構造設計は、構造計算と構造図作成。合計数百ページにおよぶ納品物をつくる必要があり、おそらくは図面は下請けに出していたのではないだろうか。
法人税もろもろを考えると、一級建築士といえども苦しい経営を強いられていることになるのではないだろうか。
一部屋何千万も払うようなマンションでも、その末端ではこの程度の支払しかされていないのである。
私の知っている範囲でも、ある種の建築資材は10年前(既にバブル崩壊後だ)の半値にまで納入価格が下落している。
下請けに下請けを重ねている建築業界の構造のコストダウンはその末端に一番大きな皺寄せがくる。
特に今のような情勢では「イヤなら別のところにする」といわれれば、そのまま受けるしかない。
単に一個人という問題ではなく、そうした「無茶なコストダウン要求」というのが、今回の一番の問題であると考えなくてはなるまい。
Nov 21, 2005
米中首脳会談についての社説を読む
■【主張】米中首脳会談 戦略的協調に限界みえる(産経新聞11月20日)
まずは最右翼から。
「経済成長と軍事力増強を続ける中国は、米国の一極支配に対抗する戦略を明確にしており、米中の協調には限界も見え始めたといえる」
「ブッシュ大統領は先の訪日中、台湾の民主化を称賛し、中国が開かれた民主国家になるよう期待を表した。中国は「重要な国」だが、真のパートナーではないという認識だ」
「米中首脳会談の陰には東アジアの安保と地域協力をめぐる戦略問題が隠れている」
として、米中のパワーゲームがはじまっていると説く。
そのパワーゲームにおいて、
「こうした中で、日本が米国との関係をより緊密化する必要がさらに強まっているといえよう」
とすることで、小泉内閣の日米同盟重視路線への支持を表明している。
まずはこれが真っ当な分析だろう。
[米中首脳会談]「『自由の拡大』を求めた大統領」(読売新聞11月20日)
次に右の読売。
「人権や民主化について厳しいスタンスをとってきたブッシュ政権だが、ここまで踏み込んだ発言はなかった」
「北京での発言は、経済の急速な発展に比べて、改善の兆しがなかなか見えない中国民主化へのいらだちを、率直に表明したものと言える」
として、読売も米中対立をクローズアップしている。
さらに、日米同盟について産経よりも行数を割いており
「ブッシュ大統領は京都での政策演説で日米同盟を「地域、世界の平和のためのアンカー(錨=いかり)」と位置づけ、アジアへの関与を強める方針を打ち出した」
「中国はアジア全域で影響力の拡大に腐心する一方、日米の同盟関係にくさびを打とうとしている。今後もそうした動きは続くだろう」
「日本はそうした中国の戦略に乗じられてはなるまい。日米関係を基軸に価値観を共有する域内諸国との連携を一層強める。それがアジアの安定につながる」
というように、日米同盟を基軸としてアジア覇権を狙う中国に対抗するのが日本のとるべき道だとしている。
産経とは裏表の社説であり、併せて一つと読んでもいいくらいだ。
社説:APEC パワーゲームはこれからだ(毎日新聞11月20日)
左ながらも比較的冷静さもみせる毎日。
今回の社説もそうした態度がみられる。
「(東アジア共同体は)APECと異なり米国を排除する枠組みである。中国の地域覇権形成に資するだけではないか、という警戒論が強まっている。ブッシュ米大統領はAPECを機に、日、韓、中、モンゴルを歴訪し首脳外交を展開している。明らかに、東アジア首脳会議に代表される「米国抜き」の動きをけん制する狙いだ」
「地域での覇権や勢力争いも目立ってきた。東アジア首脳会議は経済がテーマだが、まさに地政学的パワーゲームの舞台である」
として、パワーゲームであることを押し出してきている。
その上で
「日本はパワーゲームに十分な備えが必要だ。APECが「開かれた地域主義」をなぜ掲げているかを思い出したい。「アジアだけで」という発想も排除はしないが、その危険性は認識すべきだ。偏狭な地域主義に対しては、常に警告を発していく必要がある」
と結ぶのだが、これはどういう主張なのかがわかりにくいところだ。
日本のアジア外交においても日米同盟基軸というのを常に念頭におくべきだ、というものなのか、日本主導のアジア共同体構想に反対している(もっといってしまえば中国を利さないからつぶしてしまえという狙い)のか?
社説のタイトルからして「APEC」を前面に出したこともあるが、抑制的にしようとしたのか、あまり「社の説」としての価値がないのが残念だ。
更に今回は日経も見てみる。
「春から激化していた米中の経済・貿易摩擦はやや沈静化に向かう可能性も出てきた」
として、そもそも米中協調など崩れているとする。
更に
「政治問題での米中の攻防がこれから本格化することも予想される。米中両国は引き続き対抗と協力の「複雑な関係」(ブッシュ大統領)を維持しそうだ」
とし、米中は経済面で協力を残しつつ、政治的な対立は続くという認識を示す。
その証左として、以下のような事例を引く。
「ブッシュ大統領は「中国は社会、政治、宗教分野での自由を拡大する必要がある」として中国の民主化を求めた。同大統領は20日朝には北京市内のキリスト教会(プロテスタント系)で礼拝するという“示威行動”にも出た」
「胡錦濤主席は首脳会談後の記者会見で「中国の特色ある民主政治」を持ち出してこれに反論したが、その厳しい表情は会談での双方の応酬を物語っているようでもあった」
後者は主観ではるが、前者については政治的メッセージを読み取るべきだろう。
日本で金閣寺に“観光”したのとはわけが違う。
「交流を通じて中国の体制改革を促そうとするブッシュ政権と、経済カードや北朝鮮カードで米国を引き寄せようとする中国の虚々実々の駆け引きが強まりそうだ」
と結び、米中対立がアジア情勢の大きな流れであるとした。
一般に言われるような中国べったりの記事ではなく、他の社説では取り上げられていないような事例を掲載して、きちんとパワーゲームであることを解説して見せているのは評価できる。
ただ、この流れの中で、日本はどうあるべきかという視点がないのが残念なところだ。
さて、最後にひかえしは最左翼。
「主席が来年の早い時期に訪米することも固まった。日中の首脳が「靖国」をめぐって、信頼関係を築けないのとは対照的だ。」
「大統領は日中関係を念頭に「近隣諸国との良好な関係が重要」と述べた。中国に注文した形だが、小泉首相も耳が痛いところだろう」
出た! という感じで脈絡なく「靖国」である。
しかも、米から中への注文を、なぜか小泉首相も耳が痛い、とする。
小泉首相に注文があるならば、日米首脳会談で同じような台詞が出る筈だ。
それがないということは、米国は日中関係における関係悪化の「非」は主に中国側にあると表明しているのだということは、容易に理解できよう。
「今回、大統領は「米中は大切な貿易パートナーだ」と語った」
「政治的な自由の拡大など民主化を促しつつも、追い詰めるのを避けたのは「中国が経済的に豊かになれば、政治的な自由を求める声も大きくなる」という計算もあってのことだろう」
と、ここまでくれば、米国が表明したのは「政治的パートナーではない」ということであり、また、経済関係はとりあえず崩さないが、それは民主化工作であり圧力でありということだということになる。
が、なぜかこう続く
「今後、米国の対中政策が経済重視になるにせよ、安全保障面で中国への牽制(けんせい)を怠ることはない」
なぜこうなるかわからない。
実利はあるにしろ、経済もまた中国牽制の道具の一つとして米国は考えているという文脈と繋がらない。
クリントン政権のころからの「政治も経済も」という重視から「政治」が脱落して「経済だけ」になったのだから、「政治軽視(米中はパートナーではない)」という流れで理解するのが当然ではないだろうか。
「米中は一方で牽制しあいながらも、それぞれの実利で結びつき、アジアを中心にした経済的な発展の果実を分け合おうというしたたかさが見える」
「今回の米中会談で見えた実利志向をさらに強めることは、アジア全体の安定と繁栄にも寄与するはずだ」
と結ぶのは、「米中は実利で結びついて仲良くしてますよ。日本は米国に実は相手にされてないんですよ。早く中国のいうとおりにして、中国と同盟しましょう」ということがいいたいのだろう。
経済から中国を崩そうという米国の狙いを喝破しておきながら、こういう結論に達することができるのが謎だ。
ところで、今回の産経の社説に気になる部分が。
米国の懸念は中国がユーラシア大陸東部から東南アジアを含めた周辺外交を積極化、地域共同体への動きを加速していることもある。来月、マレーシアで開く第一回東アジア首脳会議もその一つだが、米国を排除した東アジア共同体構想は、小泉純一郎首相が提唱、日本がリーダーシップを取るからこそ、米国は黙認したといわれる。
この分析が本当だとすれば、日米同盟を利用しながらも、米国追従でない独自のアジア外交を行い、中国の覇権主義に対抗するという手をうったということになる。
対中政策ということで保守には賞賛され、独自外交ということで革新からも賞賛されなくてはいけないと思うのだが(笑)
いずれにせよ、第一回東アジア首脳会議には注目ということろだろう。
Nov 03, 2005
麻生太郎一口メモを検証する。
2ch発で、麻生太郎の「一口メモ」なるものが出回っているらしい。
そこで、その内容を検証してみよう。
ただ、時間がないので、ネット上でしかあたっていないことをお断りしておく。
もし、確実な情報をお持ちの方がいれば提供していただきたい。
◎=確実
○=ほぼ間違いない
△=どちらともいえる
?=不明
- ◎吉田茂の孫
- ◎三笠宮寛仁親王妃信子妃殿下の実兄である
- ◎薩摩藩の大久保利通候の玄孫
- ◎三笠宮寛仁親王妃信子妃殿下の実兄である
- 吉田茂の孫であることは、 本人HPプロフィールにあり。
諸資料から家計図をつくるとこんな煌びやかなものになるらしい。
鈴木善幸--妻 麻生太吉 | ├--麻生太賀吉 | 祖母 | | ├--+麻生太郎 加納久朗---吉田茂 | | ├-+-母 └信子(妹) 大久保利通-牧野伸顕---雪子 | | | 三笠宮寛仁親王 └吉田健一
- ◎子供の頃は白米禁止、麦飯のみ(よそで出された食事を何でもおいしく頂けるようになるため)
- 「わが家の食事は麦飯だった。あのころは世間もそうだったが、「人様の家に呼ばれたときにどんなものを出されても、おいしいと感謝する気持ちを持たせるには普段、賛沢させることはよくない」というのが、おふくろの方針だったね。」(→月刊自由民主2003年1月/本人HP掲載)
- ◎麻生グループ会長の経営者実業家
- 社長に就任していたことが本人HPプロフィール、麻生グループHPにあり。
なお、 衆議院議員当選に伴い、社長を辞任。現在の麻生グループは実弟が社長。麻生氏はオーナー的立場か?
- ◎学習院出セレブ
- ◎スタンフォード留学・ロンドン大留学
- 本人HPプロフィールにあり。
なお、麻生セメント入社後、昭和45~47年には西アフリカ最西端のシエラレオネにダイヤモンド鉱山の掘削の仕事で派遣されていた。 - ?学費は全て自分持ち<ホストでバイト?
- ?そろばん2級
- ネット上にソースなし
- ?元ホスト
- ソース不明。生年からして現在的な意味での「ホスト」ではないと思われるが……
- ?金持ちなので私利私欲や利権とは全く無縁
- これはなんとも。権力欲ならお金とは関係ないですし……
ただ、麻生グループは地方財閥で生半可な金持ちでないことは確かでしょう。 - ◎オリンピック日本代表(クレー射撃)
- 本人HPプロフィールにあり。1976年、モントリオール五輪・クレー射撃スキートで出場(41位)。なお、この大会をもって選手引退(→産経新聞・平成16年8月17日コラム/本人HP掲載より)
- ○クリスチャンで洗礼名はフランシスコ
- ?クールビズで胸元に見えてた金のネックレスは ロザリオ及び妻の指輪
- 本人HPにカトリックであると記述あり(→本人HP・講演録平成13年10月24日)
洗礼名、クールビズについては確認がとれず。
- ◎親台派
- 以下の事実が確認されるため、間違いないだろう。
日華議員懇談会に所属。平成15年4月に同会副会長として訪台。当時自民党政調会長で同党三役の在任中の訪台は異例。
平成13年、経済財政担当相当時、閣僚懇談会で、李登輝前総統の訪日問題で早急なビザ発給を求めた。 - ○アンチ特定アジア
- ○愛国主義者。で右系
- 政治的立ち位置は一般にはこのように分類されるであろう。
→本人HPの各種資料
もっとも、私からするとアンチ特定アジアというより、彼らにおもねることなく正論を吐いているだけとも思える(2003年5月31日東京大学学園祭における「創氏改名は朝鮮人が望んだ、日本はハングル普及に貢献した」という発言など)。
なお、創氏改名とハングル普及について『韓国でやりあったら灰皿が飛んできた。「若い者じゃ話にならない、年寄りを呼んでこい」と言ったら、おじいさんが現れて「あなたのおっしゃる通りです」』という話は麻生がそういうやりとりをしたということではなく、麻生が上記東大講演会でそういうエピソードを紹介したということらしい。 - ○大の 朝日嫌い
- ○アホマスコミが嫌い
- 言動からすると、ほぼ間違いなし。
「新聞は読んじゃダメ。眺めるぐらいでちょうどいい」 →(文藝春秋平成17年9月号/本人HP掲載)
「ポスト小泉のライバルは」とのQに「マスコミ」
→外相就任記者会見
- ○野中広務を貧民部落とせせら笑う
- 『野中広務 差別と権力』魚住昭、講談社、p344に記述があるという。
ただし、野中以外のソースがないため疑問視する声もある。
- △創価とガチで敵対中
- 一般にクリスチャンは創価学会とは仲が悪いので、可能性は高い。
ただし、創価学会から接近をうけているとの報道もある(→国民新聞平成14年5月)
- ◎クリスチャンだが靖国には毎年参拝(初めて行ったのは吉田茂に連れられて小学生の頃)
- 当然、参拝すべきです。歴代首相も参拝しているんですから。クリスチャンだった大平正芳さんも行っています。そもそも国家のために尊い命を投げ 出してくれた人に対して、国家が最高の栄誉をもって祀るということを禁じている国なんてありませんよ。そうした最低限の哲学がなければ国家というもの 自体が成り立たないと私は思います。
(中略)
初めて参拝したのは小学校六年、昭和二十七年四月二十八日のことでした。日付までしっかりと覚えているのは、『今日は日本が独立する日だから』と、 祖父で当時総理大臣だった吉田茂に言われ、一緒に参拝したからです。吉田茂に連れて行かれたのは、上野の動物園、本牧亭、鈴本演芸場、靖国、 この四つだけですな。靖国には二、三回連れて行かれたと思います。会社員になってからも、もちろん国会議員になってからも毎年必ず行っています。 いま、靖国とは別に慰霊施設を造ろうという話も出ていますが、特攻隊の兵士をはじめ戦死した者は皆、『靖国神社で会おう』と言って死んでいったんです。 →(文藝春秋 平成17年9月号/本人HP掲載)
- ◎中韓から安倍ちゃんと並び、最も警戒されてる議員の1人
- 韓国メディア、安倍・麻生氏の起用を強く批判(朝日新聞10月31日)などをみる限り、そうらしい。
- ◎国会で、2ちゃんねる発言
- 国会会議録検索システムによれば、以下の事例が確認できる。
参議院イラク人道復興支援活動:平成16年05月28日
衆議院総務委員会:平成16年06月03日
参議院総務委員会:平成17年06月16日
- ○コミック擁護派ヲタ
- ◎ゴルゴ13が大好き
- ?成田空港のvipルームでローゼンメイデンの一巻を呼んでいた
- ◎ゴルゴ13が大好き
- 今のところ読書が確認されているコミック
過去の雑誌:「少年」「冒険王」
現在の雑誌:「マガジン」「ジャンプ」「サンデー」「チャンピオン」「ビッグコミック」「オリジナル」「スペリオール」「スピリッツ」「モーニング」「ヤングジャンプ」「ビジネスジャンプ」など週10~20冊。
タイトル:「のらくろ」「冒険ダン吉」「鉄腕アトム」「鉄人28号」「ジャングル大帝」「男一匹ガキ大将」「三国志(横山光輝)」「忍者武芸帳」「サスケ」「子連れ狼」「巨人の星」「字宙戦艦ヤマト(アニメか?)」「浮浪雲」「パツ&テリー」「ジョジョの奇妙な冒険」「犬夜叉」「バキ」「ネゴシエーター」「クライングフリーマン」「沈黙の艦隊」「ジパング」「風の大地」「蒼天航路」「弐十手物語」「ゴルゴ13」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「ドラえもん」(→ビッグコミックオリジナル増刊(2003年7月02日増刊)/本人HP掲載)
「美味しんぼ」「加治隆介の議」「票田のトラクター」(→衆議院内閣委員会 :平成13年03月28日、国会会議録検索システムにより検索可能)
三省堂のコミックステーション渋谷に秘書やSPと一緒に買いにいっていたらしい(同店は既に閉店)。
- ?世界の長者ビルゲイツに安いカレーおごる
- ソースがとれず。平成15年2月25日、自民党本部で開催されたe-japan重点計画特命委員会にビル・ゲイツを招いた時のことか?(当時、麻生は同委員長)
- ?杉村たいぞー氏にプチジェラシー<自身マスコミ受けが悪いから
- ソース不明
- △クールビズは中川(酒)氏と並んでヤクザスタイル
- 主観の問題なので……
とても自民党一の左派ともいわれる河野派とは思えない。
まあ、お公家集団といわれた宏池会に古賀誠氏がいるのだから、そんなものなのかもしれない。
いずれにせよ、今度の動向次第では、ネット界最大の人気政治家になるかも──舌禍が心配ではあるが。
Nov 02, 2005
新内閣・続
さて、新内閣ができたら、社説をチェックするのが筋(笑)というものだろう。 対照的な対特定アジア外交を抜き出してみよう。
【主張】小泉改造内閣 財政再建のかたち示せ 「負担の合意」が最後の仕事(産経新聞)
一方、対中国、韓国外交の行き詰まりを指摘する声がある。小泉首相の靖国神社参拝のため、首脳の相互訪問が実現していないことなどを、その理由としている。だが、相互訪問の実現によって懸案が片付くわけではない。首脳間で「友好」を確認するだけの外交ではあまり意味はないのだ。
「反日」運動を展開し、いまだに謝罪しない中国との関係は、国連安保理常任理事国入りなどをめぐって、日本と利害が対立した。こうした利害を調整し、国益に資する外交が必要だ。
[小泉改造内閣]「内と外の『危機』に立ち向かえ」(読売新聞)
首相は、麻生氏に対し、外相として取り組む課題の筆頭に、日米同盟の強化を挙げた。中国には、12月にマレーシアで開催される東アジア・サミットで当初、自国での開催にこだわったように、アジアでの覇権確立の意図がうかがえる。
日本は米国との同盟関係を一層強化して対応すべきである。「日米分断」を狙う中国を利する愚は避けることだ。
社説:小泉改造内閣 「郵政」論功に安住するな(毎日新聞)
小泉首相の靖国神社参拝問題で暗礁に乗り上げている近隣外交の先行きは不透明状態が続きそうだ。麻生太郎外相、安倍晋三官房長官はいずれも親米路線を優先させている。しかも、参拝問題では小泉首相に同調している。今後も対中国、対韓国関係は楽観を許されないだろう。
内閣改造 アジア外交が心配だ(朝日新聞)
不安になるのは外交の布陣である。これでアジア外交は立て直せるのか、大きな懸念を抱かざるを得ない。
(中略)
私たちが驚いたのは外交だ。首相の靖国神社参拝で中国や韓国との関係はこじれ、アジア外交は浮遊しつづけている。その正面に立つ外相にポスト小泉候補の一人、麻生前総務相を横滑りさせた。
麻生氏といえば、思い起こすことがある。03年、政調会長時代の講演で、日本が韓国を植民地にしていた時の創氏改名について、朝鮮の人びとが望んだかのような発言をして、韓国などの批判を浴びた。陳謝したものの「真意が伝わらなかった」と発言の撤回はしなかった。
この夏の月刊誌のインタビューでは、もし首相になった場合、靖国参拝をするかと聞かれ、こう述べている。
「普通にお参りします。韓国や中国にいくら言われても、泰然自若としていればいい。彼らが『これ以上、この問題を言い立ててもしょうがない』と悟って、自然に丸く収まるのが、一番理想的な形でしょう」
今後はもっと慎重な発言になるのかもしれない。だが、近隣国とのとげとげしい関係を修復する役回りにふさわしい人選とは思えない。
もうひとりのポスト小泉候補、安倍前幹事長代理は官房長官になった。
最初の記者会見で、自らの靖国参拝について「国民のひとりとして、政治家として参拝してきた。今までの気持ちをこのまま持ち続けたい」と、今後も参拝を続ける可能性を示した。
小泉政権でも、外交的な配慮から歴代の外相と官房長官は参拝を控えてきた。新内閣では3人がそろって参拝するということなのだろうか。
その一方で、この人事からはずれたポスト小泉候補がいる。中国との関係を重視し、首相の靖国参拝に批判的だった福田元官房長官だ。
靖国問題で譲る気はない。関係修復はそのことを前提に考えましょう――。今回の布陣から、中韓などが首相の意図をそう読み取ったとしても無理はない。
国内では改革継続の旗を振り、アジア外交の停滞には目をつぶり続ける。この小泉路線があと1年続く。その痛手の深さが心配である。
わかりやすいまでにわかりやすいが、その中でも朝日新聞は、社説の主題に据えるほどの力のいれようだ。しかし、表題が「アジア」でありながら中身は中国と韓国しかでてこないところが、さすがすぎる。それも、ひたすら日本側に非があるというのが理解不能だ。中韓は無謬なのだろうか?
毎日新聞は抑えた論調ではあるが「近隣外交」といいながら「中韓」だけであり、靖国参拝問題だけがネックであるかのような表現をしており、根っこは朝日とかわらない。
読売新聞、産経新聞は、きちんと外交と国益を把握した社説になっているといえよう。
特にいうべきことはない。
朝日新聞や東京新聞はこれを機に靖国参拝問題を復活させたいようだが、既に参拝が行われ「実害」が出ていない状況では、盛り上がりに欠け、すぐに下火になってしまうだろう。
もはや焦点は来年の小泉首相の任期切前──来年9月のそれの直前である8月15日に参拝するのかどうかに絞られたといっていいだろう。
余談。
マスコミは事前には「小泉首相と安倍氏の間に隙間風」などいっていたが、それは何の話だったのだろう?
逆に小泉首相と福田氏との間の方がすきま風らしい。福田氏は森氏に閣僚ポスト固辞を伝えたとも、森氏は福田氏の入閣を強力に推薦したとも情報が錯綜しているが、いずれにせよ、距離を置いたということは事実だろう。
福田氏は故・福田赳夫元首相の息子だが、福田赳夫といえば、岸信介・佐藤栄作の嫡流の右派で通っていた。前政権である田中角栄の日中国交回復をうけて日中平和有効条約を結んでこそいるが、本来は台湾派(中華民国派)であり、首相在任中には8月15日を含む合計4回、靖国神社参拝も行っている。それなのに、福田氏は親中派と称され、靖国神社参拝に慎重派となっている。
血筋を受け継いだのは福田氏かもしれないが、思想を受け継いだのは福田赳夫の秘書であった小泉なのかもしれない。