May 11, 2005
日本人傭兵
イラクで新たに日本人1人が拘束されたという声明がイラクテロ組織から発表された。
今回、従前のケースとは異なり、イラクで武装警備を行っている人物が襲撃されたという。
パスポートが公開されたため、身元が特定されたが、それによれば陸上自衛隊第一空挺団という精鋭部隊を経て、フランス外人部隊で20年以上勤務したという。おそらく、実戦にも参加しているだろう。
今回のイラク入りも「警備員」ということになっているが、軍用小火器を携帯し、イラクテロ組織と「戦闘」をしている。これは、事実上、米軍基地の警備部隊(それも軍レベルの)であることを示している。つまり、まがうことなき傭兵である。
さて、なにか的外れの論評が報道されているようなので、なぜ、米軍がイラクで傭兵を使っているかを解説しよう。
正面兵力を維持するためには、補給・整備や通信、後方基地の警護など様々な後方支援が必要となる。かつて、第二次大戦当時は正面兵力の3割を後方支援に割く必要があったといわれ、現代では、これが4~5割。将来的には6割に達するともいわれている。
つまり、1万人の兵力を投入しても、実際に正面で戦っているのは5千人、などということになっているわけだ。
一方で、陸軍兵士においても、装備のハイテク化や、それに伴う教育の高度化により、軍を維持するためのコストははねあがる一方である。
予算は有限であるから、同じ予算であれば、高額装備(兵器)を減らすか部隊数を減らすしかない。が、国際世論上、民間人を巻き込まないために精密兵器(高額兵器だ)の配備は欠かせず、国内世論上、戦死者を最低限に抑えるための高性能兵器の配備も欠かせない。つまり、米軍は部隊数を減らすしか手がないのである。
そこで、米政府が考えたのが、後方支援を「アウトソーシング」することだ。後方支援ならあまり装備も高度な教育も必要とされないから、雇いものでも十分。そして、金のかかる常備軍はすべて正面兵力に回せる。
1万人の常備兵力はすべて正面へ、後方支援の1万人はアウトソーシングで。
これで、普段の軍事予算を抑制しながら、戦時には最大限の戦力を発揮するというのが米軍の近年の「改革」だったのである。
つまるとこと、今回の日本人は、アメリカの傭兵としてイラクに入り、傭兵部隊として戦闘して捕虜になったというだけの話である。
日本政府に問題があったわけでもないし、自衛隊がいるから捕虜とされたわけではない。まさに自己責任だ(家族もイラク政策を変えることなく、揺らぐこともなく、兄の件とは別に主体的に(自衛隊が)イラクにいるべきかどうかを考えてほしい。いるべきと思うなら、日本政府を支持します」とこたえており、非常に立派な態度である)。
そのためか、今ひとつマスコミの報道も盛り上がっていない。
ただし、日本政府は、政府の義務として、捕虜解放に努力すべきであるし、“雇い主”として米にも最大限の協力を要求するべきであろう。
ところで、襲われた十数人の中から“日本人”をわざわざ選んで捕虜にしたのではないかという意見もある。
が、私はこの見方はとらない。
戦闘に勝利したといっても、増援の米軍が迫っており、時間的に切迫していたはずだ。戦闘直後?に日本人だと確認して(韓国人かも中国人かもしれないのだ)、彼だけを残して──などという回りくどいことができたとは思えない。
むしろ、彼の年齢と、経歴(仏外人部隊では中隊長だったという)から考えると、この“部隊”の指揮官だったのではないだろうか。
つまり、指揮官だから、捕虜にされたわけで、日本人だからではないと思われる。
従って、この事件をむやみに自衛隊に結びつけたりするのは、この事件の本質を理解することを妨げるだろう。
■追記
報道によると、外人部隊時の最終階級は曹長ということになっているようだ。だとすると、中隊長という説はあやしくなる。
ただし、曹長だとしても、ベテラン下士官(一般的にも分隊長~小隊長クラス)であり、一部報道によれば第2落下傘連隊(仏軍全体でも最強といわれるエリート部隊)に所属していたという。
今回、指揮官であったのではないかという見解は変更しない。
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