Oct 28, 2004
三度、日本人人質事件(続)
人質になっていたのは、福岡の旅行者だとわかった。
イラク入りする直前、アンマンで日本人や現地の人間に「イラクは危険だ」と翻意を促されたが、それを強行したそうで、NGOや政府関係者ではなくイラクにこれといった用件があったわけではない。
報道によれば「旅行者だから大丈夫」「お金がなくなればホテルの外で泊まる(野宿?)」「イラクから脱出するお金をもっていなかった(所持金は1万5000円だったという)」ということで、認識が甘いとしかいいようがあるまい。
一方で、昨日、両親がコメントを読み上げていたが、あの時の親族達の異常振りを思い出すと、落差に驚かされる(というか、今回が普通の反応だろう)。
さて、この事件に、各新聞社がどのような反応を示しているかをまとめてみた。
- [邦人人質事件]「イラク民主化への妨害を許すな」(読売新聞10月28日)
- 邦人人質 テロに屈せず救出に(産経新聞10月28日)
- 日本人人質――救出に手立て尽くせ(朝日新聞10月28日)
- 日本人人質事件 政府は無事救出に全力を(毎日新聞10月28日)
- テロの脅しには屈しない(日本経済新聞10月28日)
- 人質の行動について
- 読売:人質になった邦人は、制止の声を振り切ってイラク入りしている。認識が甘かったのではないか。
- 産経:これまでの情報で判断する限り、人質になった青年は軽率のそしりを免れまい。
- 朝日:今回は人質になった香田さんの行動に疑問が多い。旅行のつもりだったのかもしれない。もしそうなら、状況認識があまりにも甘い。
- 毎日:軽率のそしりを免れない。無謀な行動であると批判されても仕方がない。
- 日経:それにしても人質となった香田証生さんはなぜこの時期にイラク入りしたのだろうか。あまり危険だとは思っていなかったとの情報もある。無謀な行動だったと言われてもしかたないだろう。
- 自衛隊撤退について
- 読売:テロリストの脅しに屈しないのは、国際社会の原則だ。首相が揺るぎない姿勢をいち早く示したのは、当然である。
- 産経:小泉純一郎首相が直ちに示した「テロには屈しない」という大原則のもと、「国として救出に全力をあげる」という政府方針以外に取るべき道はない。無法な要求を受け入れることはできないのだ。
- 朝日:朝日新聞は自衛隊のイラク派遣に反対した。しかし、前回の事件が起きたとき「脅迫を受け入れての撤退には応じることができない」と主張した。つらい判断ではあったが、「無法な要求に弱い国だ」というイメージを広げ、同じような事件を誘発してはならない、などの考えからである。私たちの立場は今回も変わらない。小泉首相は犯人の要求を拒否したが、やむを得まい。
- 毎日:テロ組織の要求をのむわけにはいかない。首相の判断は当然である。
- 日経:自衛隊のイラク派遣は政府が国会の審議を経て決定した国策であり、テロリストの要求に屈して変えるわけにはいかない。政府の対応を支持したい。
- 社説の結び
- 読売:一人の認識の甘さが、復興と民主化プロセスに深刻な影響を与えかねない。それが、イラクの現実である。
- 産経:これまでの情報で判断する限り、人質になった青年は軽率のそしりを免れまい。ただ、どんな場合であれ、国民の命を守ることは国家の役目だ。テロには屈しないという原則を堅持したうえで救出に全力をあげてほしい。
- 朝日:サマワに派遣されている自衛隊は、今年12月に派遣期限が切れる。それを延長するか、撤退すべきかについては、今回の事件とは切り離し、イラクをめぐる全体情勢を踏まえたうえで、改めて考えるべきである。
- 毎日:テロに対しては、国内でも常に強い警戒心を持ち続けたい。
- 日経:イラクには自衛隊員のほか、大使館員、報道関係者などがいる。従来以上に慎重な行動が求められる。
結びこそわかれているものの、全新聞とも人質の行動を軽率とし、自衛隊撤退せずという政府方針を支持している。特に朝日、毎日といった新聞も同様であることにはいささか驚いた。
今回の組織が、現体制派イラク人をも標的にしているような明確なテロ集団であるというのも影響はしているのだろうが、(論議を巻き起こしはしたものの)“自己責任”“テロには屈しない”というものがコンセンサスを得たということなのかもしれない。
ダッカ事件から30年弱。ようやくここまで日本はきたのか。
ところで、4月に人質となり解放された3人のメンバーのうち、一人が講演(!)で、「我々は武器をもっていないから解放された(助かった)」というようなことを言っていたらしい。
彼らが軍人であれば、対応がより厳しくなったのは事実だが、だからといって非武装の民間人だから助かったわけでもない(現に多くの民間人が殺害されている)。
もし、今回の人質がうしたディスインフォメーションを信じてしまったなら、悲劇であり、被害者であるともいえよう。
いずれにせよ、最も非難されるべきは人質の軽率な行動ではなく、テロ集団であることはいうまでもない。
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