Sep 22, 2004

米国特許制度の破綻

 「Tabキーでリンクを探す」技法の特許、MSはどう使うのか?(Itmediaニュース9月13日)というニュースが報じられた。  この特許はMicrosoftが1997年3月に出願したもので、「ユーザーは、キーボードを使用してハイパーリンクを発見し、それらの間を移動することができる。例えば、ユーザーがキーボードのTabキーを押すと、ハイパーテキスト文書内にある最初のハイパーリンクが発見され、そこに移動することができる」「Tabキーで画像のプレースホルダとなるリンクを指定して、その画像をダウンロードするか否かを決定する」こともできると記されている。

この特許が、多くのブラウザに該当する広範囲になることはいうまでもない。
しかし、ハイパーリンクはともかく、タブキーで「次の項目」に飛ぶというのは、汎用機時代以来、広く普及している技術であり、この特許の成立自体に疑問が残る。
だが、米の司法制度では「特許を法廷に持ち込む手段として誰かを提訴できるのは、特許保有者だけだ。例外として、特許所有者が誰かを『訴える』と脅した場合、脅された側が訴訟に持ち込むことはできるが、特許所有者から脅されない限り、その特許を法廷に持ち込むことはできない」となっているらしい。
つまり、MSは、この特許を保有しているだけで、同種ソフトに牽制と圧力をかけることができるというのだ。

 本来、特許制度とは、新規で有用な技術の公開を促し、かわりに、一定期間その技術を独占的に使用できる権利を付与する制度で、研究活動を促進し、産業の発展につながることを目的としている。

しかし、米国の特許制度とは、その目的とは大きく異なった運用をされているようだ。
かつて、米では出願中の特許案件を公開する制度がなく、審査期間に関わらず「成立時」から特許が17年間有効とされていた。
そこで、再提出を繰り返して意図的に成立を遅らせて、技術が普及してから特許を成立させ、莫大なロイヤリティを稼ぐという“サブマリン特許”が大きな問題になったのである。
だが、1995年の改正で有効期間は出願日から20年とされた(ただし、法改正以前の出願案件については以前の制度が適用される)。
また、2000年の改正で、アメリカでも諸外国と同様に、出願から十八ヶ月で公開されることになったのだが、これは、国外へ出願するものに限られる。
つまり、どうせ諸外国では公開されてしまうから、それに合わせただけなのだ。
国際的にも巨大マーケットである米国内での特許については、相変わらず成立するまで非公開という“恐怖”がつきまとう。

そして、もう一つの問題点が特許を認める要件だ。
国際的な「先願主義(先に出願したものが権利を得る)」に対して「先発明主義(出願の順とは関係なく、先に発明したものが権利を得る)」を採用しているだけでも齟齬があることや法的安定性を欠く(特許が成立しても、他社が「先に発明した」ことを立証できれば、特許権者が変更されてしまう)という問題がある。
更に、米の特許での発明の要件が「有用的(useful)、実体的(tangible)、具体的(concrete)」であり、日本などに比べると格段に“ゆるい”要件なのだ。
そのため、ごく当たり前で進歩性を認めがたい特許まで成立してしまっている。
これをひっくり返すには、既知の技術であることを証明しなくてはならない。 だが、その法廷闘争を行うためには、前述の条件が必要……。

どうも、米国の特許制度は、思いついたこと、目に付いたことをできるだけ申請し、それで濡れ手に粟(今回のMSの特許のような“知的所有権”の出願には技術的実装は伴わなくてよい)でロイヤリティを獲得しようとしている手助けにしかなっていないようだ。
もはや、産業の促進ではなく、産業の阻害にしか米の特許制度はなっていない。
各国は大国・アメリカといえども、臆することなく、特許制度を国際基準でグローバル化するよう、圧力をかけ続けるべきであろう。

Posted at 09:55 in 国際 | WriteBacks ()
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