Feb 02, 2005

不可解な判決

ジャスト「一太郎」の販売中止を命じる 松下アイコン訴訟で判決(Itmedia2月1日)というニュースに驚いた。
松下電産の「情報処理装置及び情報処理方法」(特許番号第2803236号)に、ジャストの「一太郎」「花子」が抵触しているというもので、製造・販売の中止と製品の廃棄を命じる判決がでたというのである。
ただし、仮執行は認められていないし、ジャスト側は控訴するとのことなので、当面、両ソフトの販売には影響しない。

それにしても、不可解な判決である。
特許は1989年10月に出願され、1998年7月17日に登録された。
内容は「「アイコンの機能説明をさせる第1のアイコン」をクリックしてから第2のアイコンをクリックすると、第2のアイコンの機能説明をしてくれる処理」だという。
判決では「表示画面上に,各種のデータや処理機能を絵又は絵文字として表示したもの」でさえあれば「アイコン」であり、同特許の技術的範囲に属すると認定。「同特許には進歩性がない」としたジャスト側の主張を退けている。
しかし、この認定では、ほとんど全てのPC用アプリケーションがこの特許に抵触するということにはならないか?
それこそ、WindowsというOS自体、これに抵触するだろう。松下は早くマイクロソフトを訴えるべきだ。

だが、89年10月といえば、既にMac-OSは6.0.2にまでなっている。松下の出願を特許と認めること自体に疑問が残る。ジャストのいうように「同特許には進歩性がない」ということになろう。
判決を読んでいくと、ジャストは今回争点となったヘルプ機能について「Windowsのヘルプファイル機能を利用しているもので、Widnowsの標準機能にすぎない」として、ジャストを訴えること自体が的外れであるとしている。
それに対して、松下は「ヘルプ表示プログラム等がWindows標準機能であったとしても、それを呼び出すようにつくったのはジャストであり、一太郎・花子をインストールしなくては、そのヘルプは現れないのだから、“ジャストが”特許侵害をしている」と主張した。
これに対して、裁判所は「被告は,Windowsというマイクロソフト社のオペレーティングシステムそのものに,本件発明と同様の機能があるから,被告製品は「その発明による課題の解決に不可欠なもの」ではないと主張する。その主張の趣旨は必ずしも判然としない」としている
……いや、重要な争点だろう、これは。
例えば、エクセルに特許侵害があったとする。
そうすると、エクセル本体だけでなく、エクセル連携やエクセル用フォームとかで、エクセルの(特許侵害にあたった)機能を利用している全てのものが、特許侵害を認められるということになる。
法的判断は別として、「主張の趣旨がわからない」っていうのは、問題だろう。
更に、この後段には「あくまで被告製品をインストールしたパソコンによってしか実行できないものであるから,被告製品は本件発明による課題の解決に不可欠なものであり,被告製品をインストールする行為は,本件特許権を侵害する物の生産であるといわざるを得ない。」としている。
これも妙な話で、特許侵害要件である「機能(=ヘルプファイルの呼び出し)」の判断と、ジャストがその機能で利用するために用意している「データ(=ヘルプファイルの中身)」が混同されてしまっているようだ。

どうも裁判長に理解が欠けているような気がする。
そう思って、少し裁判長について調べた。
高部眞規子裁判長は最高裁調査官も勤め、知財の法務のエキスパートらしい。論文なども多いようだ。
また、青色LED訴訟の時に少し話題になった、味の素事件判決の地裁裁判長で、発明者に相当の対価1億9935万円を認める(ただし、使用者の貢献度95%,共同発明者間における原告の寄与度5割)判決をした人物でもある。
どうも、コンピュータにあまり詳しくないのに、知財の専門家であるあまり「特許」を手厚く保護しようとしすぎたのではないかと想像する。

どのような判決が出るにせよ、高裁では、もう少しコンピュータを理解できる人物が裁判長となることを願う次第だ。

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